今回は、2026年3月の妙智様寄稿文(「想い出の研修旅行は素晴らしいニュージーランドと最高の仲間」)を拝読して触発されたことから、前職(CX=キャセイパシフィック航空)でまだ駆け出しだった頃の思い出を振り返ってみたいと思います。
時は1994年12月。中国本土返還を間近に控えながら街には活気が溢れ、粗削りな雰囲気を纏った香港を肌で感じられる時代に、旅行会社の皆様にもCXのサービスと本拠地香港それぞれの魅力を体験していただく3泊4日の研修旅行に、入社2年目・29歳のインディビ(当時の呼称で、個人旅行=業務渡航系)営業担当として同行させていただきました。
総勢15名の参加メンバーを集めるには、まず各社様への声掛けから始まります。当時は各航空会社が研修旅行の機会を積極的に提供し選択肢が豊富にある中、ベテランの方々はすでに香港を経験済みであることが多く、欧州や米国といったLong-haul Destinationを選ばれる傾向がありました。そのため「初めての研修旅行には香港が無難だろう」というお考えのもとCXの研修旅行参加者には専ら20代若手の方が多く、私が同行したメンバーもまさにそうした構成でした。
一同は、ビル群すれすれの高さを飛行して着陸する“香港カーブ(急旋回アプローチの通称)”が有名で、数年後に役目を終えようとしていた啓徳空港(現在の玄関口であるチェックラップコック国際空港の開港は1998年7月)に降り立ちました。
主な旅程としては、九龍地区と香港島地区に点在する多数のホテル視察(これはまさに詰め込み学習の極みでした)、中環(セントラル)地区にあったCX本社訪問・ブリーフィング(写真はその一コマ、懐かしのOHP使用)等のお約束行事をこなした後に市内の名所巡り(王道のタイガーバームガーデン、レパルスベイ、ビクトリアピークからの百万ドルの夜景など)、そして食の天国にふさわしく西貢の海鮮に始まり上海、広東、四川、潮州料理、もちろんワゴンで提供される飲茶や朝粥も網羅し、まさに“中華三昧”の日々でした。
当時ならではの光景として、「DFSでのお買い物天国(添乗員割引の活用を含む)」「ネイザンロードで飛び交う“ニセモノトケイあるよ、お兄さん”という呼び込み」「ビルから突き出た看板すれすれを走るオープントップバス2階からの眺め」など、喧騒と熱気が入り混じる独特の空気感を覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
寄稿文の中にも“古き良き”香港に触れたものがあり(2025年9月・西沢様「香港今昔:90年代と現在」、2024年10月・瓜生様「私の心のふるさと・香港」)、当時のきらびやかな印象や旅の高揚感には、私も深く共感するところです。
参加メンバーは、その後「写真交換会(スマートフォンのない時代でしたので)」を何度か重ね、30年を超えた今もなお私を含めた5名が交流を続け、それぞれの家族も交えた香港旅行や国内旅行、定期的な飲み会などを通じて関係を育んでいます。残念ながら業界に残っている人はいませんが、そのうちの一人は銀座・並木通り沿いにあるクラブを営んでおり、週末の空き時間にその店を貸し切って(とはいえ飲食は持ち込み・割り勘という堅実なスタイルで)年に2〜3回集まり、互いの近況を報告し合っています。
研修旅行以降も、業務出張やプライベートで数えきれないほど香港を訪れましたが、B級グルメや手頃で魅力ある店が減少し、高級ブランドショップやブティックが立ち並ぶ現在の香港には寂しさを感じます。ユニクロがここまでグローバル展開する以前の当時は、Giordano、Bossini、Espritなどの香港発カジュアルブランドが手頃なお土産の定番でした。そうした「香港ならでは」の魅力が薄れてきたことは否めません。
それでもなお、点心の味(とりわけ水餃子や小籠包の繊細な皮の食感)は香港ならではのものですし、羽田・成田から空路で片道4~5時間で時差も1時間、公共交通機関を利用して安全に自由旅行を楽しめる点は、今もなお貴重な魅力だと思います。
皆さまもぜひ、久しぶりにあるいは初めての場所として香港を訪れてみてはいかがでしょうか。その時はCXがお勧めデスヨ!
著者:柳沢 淳(トラベルポートジャパン株式会社)
掲載日:2026年06月25日