その時、私はニューヨークにいました。今年の1月、おなじみの風景、タイムズスクエア、ロックフェラーセンターは大寒波が来ていても、相変わらず観光客で賑わっていました。ニューヨークの空気感、風景、時間軸が私は大好きです。しかしその時は、空港が閉鎖され帰国が二日も延期となり、なんだか取り残されたような気分でした。
若いころは、「アメリカ!と言えば、西海岸でしょ!」と、青い空に青い海、広大で開放的な空気感、それが私にとっての“ザ!アメリカ”でした。その頃、東海岸に訪れた時のイメージは、なんだか雰囲気が暗い、人が冷たいなぁというものでした。勝手な思い込みだったようにも今は思います。
思うに、、、大阪生まれ大阪育ちの私。曽根崎、堂島という聞きなれた繁華街が校区であり、友人の家も遊び場もそのエリアでした。大阪駅周辺高層ビルの谷間で育ったようなものです。大自然に憧れ、田舎暮らしを夢に見、将来は自由気ままに自然と共生しながら生きたいと思ったりしていました。旅先として選ぶのは、やはり広大な自然の中で空気をいっぱい吸って過ごせるエリアを好んでいました。そして結婚後は、図らずとも本州の最北端である青森県で過ごすことになり、すごい田舎でもなく、かといって便利な暮らしというものでもなく、私にとって東北はまるで異文化であり、異日常な生活空間でした。するといつの日からか、旅のデスティネーションとして、ニューヨークを求めるようになっていました。
旅に求めるのは、今の自分にない環境だったり、違う時間軸を欲するものなのでしょうか?旅では、異日常にどっぷりひたり、解放感に満たされ、リフレッシュを求めるのかもしれません。私は居住する環境が変わったことで、全く意識しない間に、自分の旅のデスティネーションの嗜好が変化していました。
そして、話はニューヨークに戻り、大寒波できらびやかなネオンは雪でぼやけ、テレビでは“不要不急の外出は避けてください”というようなニュースがひっきりなしに流れていました。それでも観光客は肩を丸めながら、つるつる足を滑らせ、いかにも危なげにお土産ショップに入っていきます。私もそのうちの一人なのですが。そんな時、友人からたまたま、わが町、鮫町での先日の飲み歩きツアーの写真がLINEに入ってきました。わが町八戸市、かつて漁業が盛んで漁師で賑わったという鮫町の銀座街。当時の賑わいの頃から言うと、今、お店の数は十分の一以下にも減ったという飲み屋街。通りは裏さびれた寂しい飲み屋街に見えますが、それでもなんとも癒される静かな空間と温かなお店。ニューヨークの大寒波の中、世界から訪れる観光客が視界に入る中、送られてきたその写真は、閑散としてはいるものの、平和で安心と温もりを思い出させるものでした。ニューヨークの風景を前に、対照的な画像でした。その時、私は、日本にやってくるインバウンドの方々は、この違った空気感を求めてやってくるのだ!と実感したのでした。
つい先日、雑誌「TIME」「NATIONAL GEOGRAPHIC」の記者がイギリスから弊社の鮫銀座飲み歩きツアーの取材にやってきました。ニューヨークで実感したことを胸に、訪れた記者にこの漁師町の寂れた銀座街の歴史や文化、魅力をいつもに増してや自慢げな気持ちでお伝えしました。日本にしかない風景、この町にしかない文化、食体験はまさに地域のプライドです。温もりと安心、平和を感じられる青森県この町で、訪れる人たちを両手広げてお迎えをしたい!と強く思った瞬間でもありました。
著者:町田 直子(株式会社ACプロモート)
掲載日:2026年05月19日