―“別れ”と“旅”をつなぐ、次世代のトラベル提案―
平素よりトラベル懇話会の皆様には大変お世話になっております。
客船クルーズ専門旅行社のクルーズバケーション代表の山田康平でございます。本日は、私が近年強く可能性を感じているテーマ「散骨ツーリズム」について、現場感とともにお話しさせていただきます。※海洋散骨はグループ会社事業の「海洋記念葬®シーセレモニー」にて手掛けております。
■ 散骨は“旅の理由”になる時代へ
近年、日本においても海洋散骨の認知は確実に広がってきました。従来の「お墓に入る」という価値観から、「自然に還る」「海に還る」という選択肢へ。
これは単なる葬送の多様化ではなく、「人生の締めくくり方の自由化」とも言える変化です。その中で、私が注目しているのが「散骨 × 旅行」=散骨ツーリズムという考え方です。
■ ハワイ・沖縄で起きている変化
特に顕著なのが、ハワイや沖縄といったリゾート地です。
これまでであれば「旅行に行く」→「観光する」という目的が一般的でした。
しかし今は、故人の想いを叶えるためにハワイへ行く、家族で沖縄に集まり、海で見送る
というように、“意味のある旅”としての需要が増えています。
■ 「悲しみ」だけで終わらない時間設計
現場で印象的なのは、散骨後の時間の過ごし方です。散骨を終えたご家族は、そのまま船上で食事をされる、ホテルでゆっくり滞在される、観光地を巡り、思い出を語り合う、といった形で、“悲しみ”だけで終わらない時間を過ごされます。私はこれを「グリーフ(悲嘆)とツーリズムの融合」と捉えています。
■ 「堂々と旅に行ける理由」という価値
少し踏み込んだ表現になりますが、この市場の本質はここにあると感じています。散骨という行為は、社会的にも家族的にも「大義のある移動理由」です。
つまり、表向きは葬送でありながら、心のどこかで“旅をしている自分”を許せるという構造が存在しています。これは決して不謹慎な話ではなく、むしろ人間らしい自然な感情です。忙しくて家族旅行ができなかった親族が一堂に会する機会が少ない、人生の節目で立ち止まる時間が欲しい。こうした背景の中で、散骨は“旅をするきっかけ”にもなっているのです。
■ 旅行業界にとっての新たな可能性
ここに、我々旅行業界にとっての大きなチャンスがあると考えています。散骨ツーリズムは単なるオプションではなく、航空券・ホテル・送迎、クルーズ手配、現地での食事・体験、メモリアル演出などを組み合わせた高付加価値のパッケージ商品として成立します。さらに特徴的なのは、価格競争になりにくい、感情価値が高い、リピートではなく“紹介”が生まれやすいという点です。
■ 今後の展望
今後は、以下のような広がりを想定しています。ハワイ・沖縄に加え、グアム・バリなど、日本人になじみ深い海外リゾートでの「リゾート散骨」の拡張、「記念日」と「散骨」を組み合わせた新しい企画、デジタルアーカイブや映像演出との融合、そして何より、「人生最後のセレモニーを、最高の旅にする」という価値観が、徐々に一般化していくと考えています。
■ 最後に
旅とは本来、「人生の節目」に寄り添うものです。結婚、記念日、挑戦、再出発——そして、“別れ”もまたその一つです。散骨ツーリズムは、その最も繊細で、最も本質的な領域に旅行業が関わる新しい形だと思っています。今後、皆様とこの分野についても意見交換させていただければ幸いです。引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。
※参考:ハワイでのリゾート散骨事例(海洋記念葬®シーセレモニー)
https://sea-ceremony.com/area/hawaii/
著者:山田 康平(株式会社クルーズ バケーション)
掲載日:2026年05月01日