Voice メキシコ「死者の日(Día de Muertos)」体験記
  私は、ディズニー映画『リメンバー・ミー』を観て以来、いつかメキシコの「死者の日(Día de Muertos)」を訪れたいと思っていました。
そして2022年10月プライベート旅行でその願いが叶いました。想像していた以上に色彩豊かで、そして何よりも“心が震える”体験でした。

そもそも「死者の日」とは?

メキシコで毎年 10月31日〜11月2日に亡くなった家族への愛と敬意を示す伝統行事です。

1日は子供の魂を迎え、2日は大人の魂を迎えます。
日本のお盆に近い考え方ですが、悲しみではなく、「生きていた時間を讃え、再会を喜ぶお祭り」という点に違いがあります。
街も人も、とても明るく温かい空気に包まれます。

参考までにメキシコ大使館の死者の日の映像を是非ご覧ください。

https://x.com/embamexjp/status/1985900733846470733?s=53

街全体が祭りの雰囲気に染まる

町に降り立った瞬間、カラフルな飾りや花の香りに心を奪われます。
特に、マリーゴールドの鮮やかなオレンジ色は、亡くなった人の魂が道に迷わず帰って来れるようにと飾られるもの。
夕暮れの光の中で輝き、まるで街全体が黄金色に染まっているようでした。

街角には、かわいらしいガイコツ(カラベラ)の置物や、手作りのオフレンダ(祭壇)が並び、歩くだけでも心が躍ります。

祭壇に込められた、家族の深い想い

街中に設けられた祭壇には、故人の写真や好きだった食べ物・飲み物などが丁寧に飾られています。
ひとつひとつに家族の記憶や愛情が宿っていて、「死を悼む」というより、“大切な人と再び会える日”として祝われていることが伝わってきます。
私も民族衣装に身を包み、死者の日メイクをして街を散策しました。
コロナ禍の影響もあり日本人の姿はほとんどなかったのですが、たくさんの人から
「一緒に写真を撮ろう!」「テキーラ飲むかい?!」などと声をかけられ、すぐに“アミーゴ(友達)”になれます。

音楽と踊り、そして夜の墓地の光景

夜になると、街のいたるところでマリアッチの生演奏が始まり、仮装をした人々が踊りだします。観光客でも自然と輪に入れてくれるあたたかさがあり、思わず笑顔がこぼれます。

そして、この日もっとも心を動かされたのが「墓地」です。
静かで少し怖いというイメージとはまったく違い、家族や友人が集い、ギターや笑い声が響いていました。
テキーラを交わしながら思い出話に花を咲かせ、キャンドルの灯りが優しく揺らめいています。

墓石の周りには色とりどりの花びら、パン・デ・ムエルト(死者のパン)、タマレス、メスカルなどが並び、
まるで「今、みんなで一緒に食卓を囲んでいる」かのような温かい空間でした。

夜空を見上げると、キャンドルの光が星と溶けあうように瞬き、
地上にも天にも“魂の灯”がともっているようでした。

気がついたら涙がつーっと流れており、歴史の背景や家族への想い、色々な事を想像して心が震えるほど感動しました。

メキシコの「死者の日」は、ただ亡くなった人を思う日ではなく、
「生きること」そのものを祝福するお祭りです。

色彩、音楽、食、祈り、笑顔。
そのすべてがやさしく胸に触れ、心があたたかくなる体験です。

もしメキシコを訪れる機会があるなら、ぜひこの時期に。
きっと、人生の景色が少しだけ豊かになる旅になると思います。
 

著者:半澤 信子(株式会社メキシコ観光)

掲載日:2025年11月12日