インタビュー形式でご紹介します。
旅行業界に携わり20年以上。クロノス・インターナショナル専務取締役として活躍する原田純さんは、常に「旅を通して人を笑顔にしたい」という情熱を胸に走り続けてきた。
コロナ禍を経て、業界が大きな転換点を迎えるいま。原田さんが見つめる“これからの旅”とは——。
Q1:まず、旅行業界に入られたきっかけを教えてください。
もともとは法律事務所に勤務していましたが、学生時代に経験した海外旅行がとにかく楽しくて。いまで言う「推し活」に近い感覚でしたね(笑)。
初めて訪れたインドネシアでは、文化や人々のエネルギーに衝撃を受けました。サーフィンをしに行った海辺で、現地の女性が歩きながら、当時キムタクの真似をしていた私の髪を何度断っても三つ編みにしてくれたことを今でも覚えています。
その自由さ、活気、日本では味わえない刺激……すべてが新鮮でした。そこから「海外の魅力をもっと多くの人に伝えたい」と思うようになり、クロノスに入社しました。
Q2:入社から20年。業界の変化をどう感じていますか?
本当にいろいろなことがありました。
BTOB中心だった弊社がBTOC事業部を立ち上げたり、世代交代が進んだり。そして何よりコロナ禍という大きな試練を経験しました。
ただ、その中でも一貫して感じているのは「海外旅行の価値は決してなくならない」ということです。
海外での出会いや体験は、人を強く優しくしてくれる。だからこそ、私は今も「海外旅行を愛する日本人を増やしたい」という想いを持ち続けています。
Q3:その想いが「パスポート普及率2倍プロジェクト」につながるのですね。
そうなんです。
現在、日本のパスポート保有率は約17%にとどまっています。手続きの煩雑さや費用の問題など、いくつかのハードルがあることは確かですが、これを業界全体で変えていけたらと思っています。
この懇話会の皆さんと力を合わせ、「パスポート保有率を2倍にする計画」を立ち上げられたら素晴らしいですよね。
旅が“特別なイベント”ではなく、もっと身近な文化として根付く社会をつくりたい。それが私の夢です。
Q4:一方で、ご自身がパニック障害を経験されたとも伺いました。詳しく伺っても宜しいでしょうか。
はい。数年前に軽度のパニック障害と診断されました。
当時は電車やバス、エレベーターに乗ることも難しい時があり、
大好きだった海外旅行にも行けなくなりました。
ただ、今振り返るとその経験が「旅の意味」を改めて考えるきっかけになったと思います。
旅行は、単に場所を移動することではなく、心を動かす体験なのだと。
だからこそ、同じように不安を抱える人が安心して旅を楽しめる仕組みをつくりたいと思うようになりました。
Q5:どんな仕組みをイメージされていますか?
例えば、専属ドクターが同行するツアーや、移動時間を短縮したコース設計など。
「安心」というサービスの価値を再定義することで、これまで旅行を諦めていた方々にも楽しんでもらえるのではないかと考えています。
人生という大きな旅路の中で、誰かの笑顔を生むお手伝いができたら嬉しいですね。
Q6:最後に、トラベル懇話会の会員の皆さんへメッセージをお願いします。
この業界は、夢と希望を届ける素晴らしい仕事です。
これからも互いに知恵を出し合いながら、次の世代へ“旅の力”を伝えていきたいと思っています。
ご縁を大切にし、皆さまと共に新しい時代を切り拓いていきたいです。どうぞよろしくお願いいたします。
編集後記
情熱と誠実さを併せ持ち、自らの経験をも前向きな力に変えていく原田さん。
その言葉には「旅が人をつくる」という真理が息づいていました。
彼が描く“安心して旅できる世界”は、きっと私たちの未来の姿に重なると確信しています。(取材・文:JINNNA)
著者:原田 純(株式会社クロノス・インターナショナル)
掲載日:2025年11月12日