Voice ジョブズのことば
小学生低学年の頃、かけっこが遅かった。運動会ではいつもビリだった。でも走り終わるとニコニコしていた、と母が言うので、悔しいとかの思いはきっと無かったのだと思う。
小学校4、5年生の頃、父がなぜか急に山登りを始めて、毎週のように家族で秩父や寄居の山歩きをした。登山というよりハイキングで、名の知れた山ではなかったが、山頂を極めた達成感は気持ちが良かった。
中学校に入学した4月に体力測定があり、その中に男子は1500m走があった。何気なく走ったのだが、学年で1番になった。確か5分21秒だったと思う。1学年11クラスある埼玉県北のマンモス校で、運動で1番になる経験はなかったのでビックリした。
サッカー部に入部したが駅伝のメンバーが足りないので頼まれて応援することになった。今から考えるとずいぶん素直に応じたと思うが、練習は嫌ではなかった。
高校に入ると迷わず陸上部に入部したが、甘くはなかった。県大会ではまったく歯が立たず、実力を思い知らされた。
大学では、陸上競技から足を洗うつもりだったが、たまたま入居したアパートが陸上部の巣窟みたいなところで、止む無く陸上部に入った。先輩から人間、二十歳くらいの頃は練習しなくても自己ベストが出るんだよ、と言われたが、無論練習しなくて良いわけではなかった。結局、当時「ヒマ経」と言われた経済学部で、気が付くと練習に打ち込んでいた。3年の代替わりで主将に選ばれ、4年の大会では10000mで優勝した。就活時には自己PRネタになった。

アップルの創業者、スティーブ・ジョブズはスタンフォード大学の卒業式に招かれた際のスピーチで、「将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることはできない、できるのは、後からつなぎ合わせることだけだ」と述べましたが、自分の陸上競技人生は小学生時の山登りがルーツで、いつも目の前のことに懸命に取り組んできただけですが、振り返れば「あぁ、つながってる」と思います。
後からしかつなぎ合わせられないので、「いまやっていることがいずれ人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと信じるしかない」とジョブズは述べるわけですが、これが自分の人生訓になりました。

日本人の海外渡航はコロナ前の7割前後まで回復しましたが、伸び悩んでいます。物価高、円安、先行き不安など、様々な回復しない理由が挙げられますが、回復している方にも、もう少し光を当ててはどうでしょうか。全体と平均に真実はないとよく言われますが、全体では7割ながら、切り口によって違う見え方があると思います。
もはやアフターコロナではない、コロナ後の新常態にあるものとしてコロナ前との比較でなく新しい何かを思い定め、それがいずれ実を結ぶだろうと信じて目の前のことに取り組んでいきたいと思います。

著者:高橋 誠一(株式会社インフィニトラベルインフォメーション)

掲載日:2025年07月31日