かつては「趣味は読書」、と言っていたのが恥ずかしいぐらい、いまは読書の機会が激減しました。
言い訳はいくらでも挙げられます。
インプットの方法が多様化したこと(とくにインターネットの登場で、従来の書籍を読むという、文字通りの「読書」という概念が変化しました)や、
会社を2社創業したので業務も2倍になって働いている、などなど。
でもどれも言い訳です。現にゴルフには行っているわけですし。とにかく、書籍の読書量は残念なことに激減しました。
20世紀時代の趣味は読書でした。そしてこのころの読書で、21世紀のいまの時代の一部を見通せたのも事実です。そのうちの3つだけ挙げておきます。
1つ目は、「労働力の流動化」です。
20世紀は、「終身雇用」が標準でした。新卒で入社した会社を途中で退職すると、「脱落者」に近い呼ばれ方をされていました。しかしいずれは流動化
していくことになるだろうと感じていました。
これは後に現実のものになりますが、20世紀末期の大手の都市銀行や証券会社の破綻あたりから労働力の流動化が小さく動き始めたように思います。
この考えに至るヒントの書籍として、「労働システムと勤労観―フレックス・タイムと週休二日制の導入」 (大久保貞義著・1976年)を挙げておきます。
2つ目は、「信念主義から民族主義への変化」です。
20世紀を象徴する世界分断は「冷戦」でした。民主主義と社会主義という、「信念(イデオロギー)」の対立が世界の緊張を覆っていました。
ただ片方のイデオロギーはやがて論理破綻することは誰もが気づいていました。もしそうなれば、それに変わる対立軸が台頭してくると感じていました。
それが21世紀になって顕著になった「民族間の対立」という対立軸です。いまはさらに激化しています。
この考えに至るヒントの書籍として、「文明の衝突」 (サミュエル・ハンティントン著・1996年)を挙げておきます。
そして3つ目は、「超・個人最適化」です。
20世紀はマニュアルに沿ったサービスで水準を均一化するのが基本モデルでした。それは高級でもファストフード店でも同じです。そのサービスレベルの違いで、ラグジュアリーサービスか大衆サービスかに分岐していただけでした。
それが21世紀になり、十把一絡げのサービスではなく、テクノロジーの活用により、その個人にとって超のつく最適化、いまでいうところのCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)の深化につながってきました。
この考えに至るヒントの書籍として、「The Engaged Customer」(Hans Peter Brondmo著・2000年=日本語未翻訳)を挙げておきます。
21世紀になっての読書の機会の激減は悔やまれますが、今からでも読書量を増やすことは遅くないと思っています。
とここまで書いて、ゴルフ場に向かう時間ギリギリになりましたので、この辺で失礼します。
著者:鶴本 浩司(トラベルボイス株式会社)
掲載日:2024年05月08日