Voice 夏の思い出とSDGs
40年以上も昔、懐かしい学生時代の話になる。夏休みを利用して、カナダ・アルバータ州のジャスパーとバンフ国立公園にレンタカーを借りて友人たちとキャンプ旅行をした。なにしろ、そこにはありのままの大自然が存在し、景観の美しさはもちろん、これまで経験したことがない壮大な風致であったことをいまでも鮮明に記憶している。

森林や植物だけでなく、動物もカナダ政府管理下でレンジャーたちに守られていて、ヘラジカ(ムース)、ビッグホーン(オオツノヒツジ)、マウンテンゴート(シロイワヤギ)など多くの野生動物を目の前で見ることができた。昼にキャンプ場でバーベキューを楽しんでいた時には突然ブラックベア(クロクマ)が出没して肝を冷やした。幸いブラウンベア(グリズリー)でなかったことで命拾いした。人間より動物の数が圧倒的に多かった。天候にも恵まれ、カナディアンロッキーの山並みや森林、滝、湖など多くの素晴らしい風景を楽しめた。

日が暮れてテントを張りたき火をした。星の輝きは言うまでもない。日常からの解放感とカナディアンウイスキーも手伝い、気分良く夕食を楽しんでいたが、時間が経つにつれて、あまりの自然の深さと静けさが逆に恐怖心に変わっていった。いままでに味わったことのない感覚だった。

われわれは大自然の中でこの場所を使わせてもらっている、存在させてもらっているのだと。都会で生活しているとそんなことを感じることなどない。逆に人間は自分たちが地球を動かしているかのように考えてしまいがちだ。しかし、それは大きな勘違いであり、われわれ人間はこの地球という星に住まわせてもらっていることをあらためて知らされた。

最近、SDGsの話題を耳にしない日はない。すでに遅きに失した感もあるが、われわれはもっと自然を大切にしていかないといけない。大自然に身を置かせていただいているということをもっと意識しないといけない。

温暖化による自然災害も後を絶たない。40年以上前のあの時に感じた思いがあらためて蘇ってくる。

著者:森谷 博(学校法人トラベルジャーナル学園)

掲載日:2022年09月19日