Voice マスク
 卒業シーズン3月中旬、あるテレビ番組での一コマ。
 まだ手渡されていない「卒業アルバム」に関する高校生の話。
「わたしは卒業生ですが、わたしたちの卒業アルバムにはマスク顔の写真ばかりになると思います」「修学旅行は中止、体育祭は2年連続縮小、文化祭も2年連続中止になってしまったので一体、どんなの写真が掲載されるんだろうか?」「学級の集合写真もマスク姿で取りました」
 これはコロナ禍の長期化により、2~3学年時は学校行事が中止や縮小となった2年間の中での卒業を迎える高校生の卒業アルバムに関する心配ごとでした。
本当にどのように編集されるのであろうか?
 われわれの高校時代、40数年前の卒業アルバムの光景とは、ほど遠いものになるのであろう。体育祭、文化祭、修学旅行などのスナップ写真、これが当たり前のようにずっと思っていた。
 彼らの通常の学校行事や学生生活がそこには想い出として残っていない。
10年後、20年後、30年後にこの卒業アルバムを見たとき、その時代をどう振り返りのだろうか?何を思うのであろうか?とふと思いを馳せてしまう。

 また、大学生の就職活動における採用面接も気になるところである。
当社の事業の一つでもある「JATA旅行・観光業界就職セミナー」を例年開催している(コロナ禍で出展企業が少なく2021年・2022年は開催中止)が、コロナ禍での採用面接の在り方について気にかかった。そこで就職活動をした学生と企業の採用担当した方に問うてみたことがある。
 大学生の就職活動における採用面接おいては、リモートでの一次面接、最終面接はリアルであってもマスク姿での面接が行われた企業も多いと聞いている。
企業側の採用担当者は、採用決定までのプロセスにおいて、リモートか履歴書の写真でしか顔を見たことがない。近距離マスクなしの顔は見たことがないわけである。
営業主体に人材を求めている企業なら、当然、面接で笑顔など表情の豊かさが採用の合否を左右することもある。わたしも採用面接官を経験したことがあるのでよくわかる。
 一方、学生側も筆記試験は自信がないが、リアル面接のプレゼンに勝負をかける学生も少なくない。言葉だけではなく、笑顔や表情で点数を上げるという作戦も取れないとか。やはりリモートとリアルではその場での臨場感、空気や匂いが違い過ぎると思う。リモートではマスクなしではあるがリアルな表情は伝わらない。リアルでのマスク姿でも同様であろう。
 やはり、旅行観光業界は「人と人」の結びつきが絶対的である。少し前にトヨタの社長もCMで「AIを造るのも人、AIを動かすのも人」と言っているように、われわれの業界も人財こそ成長戦略の最大の柱だと思う。人財の育成、人間力の向上が必要です。ITが進化、発達しても「旅行・観光業界」は、人が旅行する。人が旅行を企画し、結局はどんな形であれ人が販売する。人と人との関わりをなくしてはあり得ない商売です。
ある方が、「観光」とは「人が心の光を見に行くこと」というのを聞いたことがあります。

 コロナ禍で今までの当たり前だったことがそうではなくなり、今まで見えていなかったことの大切さがわかったことも多々あることも事実である。
しかしながら、公私ともに、やっぱり一日も早く、今までの日常生活に戻って欲しい
ものである。

著者:仲 章弘(株式会社 ジャタ)

掲載日:2022年04月15日