Voice 30年後の旅行業界
2022年3月、2ヵ月半ぶりのまん延防止等重点措置が解除され、国内旅行ではGOTO事業再開の検討、海外旅行では入国制限の緩和、海外旅行再開に向けての現地視察等、ようやく少しずつではあるが業界再始動の機運が高まってきており、何とかこのまま復活の道を歩みたいと願わずにはいられない。
未曾有の危機に直面したこの2年余りの中で、多くのものを失ったが中でも一番の痛手は次世代を担う若手社員の離職ではないかと考えている。
弊社でもこの間に多くの若手社員が会社を去っていった。
計画休業、リモートワーク等で将来について考える時間が増えたこと、ネット等で転職に関する情報が容易に入手できる等も要因の一つではあるが、最大の要因は会社、業界に対する将来的な不安であるのは明白で、転職先として圧倒的に多いのが公務員であることがこれを証明している。
私自身、退職願を持ってきた何人かの若手社員と話しをし引き留めもしたがその時に「30年後の会社・業界」の未来予想図を明確に語ることのできない自分がいることも事実で、このことに愕然とし、それ以来このことが頭から離れずにいる。
「この時代、30年後なんてわかるわけがない」これが私も含めた多くの業界人の本音であるとは思うが、これでは20代の若手社員あるいは業界を志す学生たちに魅力ある会社・業界であるとは思ってもらえないであろうと反省している。
近年の旅行業界はサプライヤーの直販化、インターネットの急速な浸透による流通革命等によりビジネスモデルの変革を余儀なくされており、これにコロナ禍が追い打ちをかけた形となり、もはや業界の変革、新たなビジネスモデルの構築は待ったなしの状況になったと言える。
インターネットの強化、ソリューション事業の拡大、地方自治体との連携強化、Withコロナの新しい旅のカタチの提案、特化型旅行の更なる深堀り、新規事業の推進などなど、、、。
進むべき道の選択肢は多岐に渡るが、将来的にも社会に必要とされる業界、会社になるためにはどのように変革していくべきか、間もなく訪れるであろうアフターコロナの反動需要による空前の旅行ブームをステップ台にして模索しながらアフターコロナの新しい旅行業界のビジネスモデルを構築していかなければならないと考えている。
「30年後」の業界の人達に「30年前のコロナ禍が旅行業界繁栄の大きな転換期となった」といわれるように。

著者:堤 真也(株式会社 阪急交通社)

掲載日:2022年04月04日