Voice 本会創立の「第一幕」を尊重しつつ、「第二幕」では更なる発展のため団体名の変更を ~ 提言:現在の名称「トラベル懇話会」を変更し、「観光経済同友会」へ ~
トラベル懇話会創立40周年記念誌を丹念に読んでみた。本会の歴史を知るうえで貴重な文献で、もし未読ならこの機会に一読することをおすすめしたい。

1978年5月、トラベル懇話会は6名の発起人によって発足した。記念すべき第1回目の例会は翌6月に計17名の参加で開催された。当時は日本人の海外旅行が急拡大し、同年には350万人突破という史上最多の続伸を続けていたときでもある。

発起人の回想録や構想の軌跡を辿ると、業界周辺の新知識を吸収するための勉強会を作り互いに切磋琢磨をすることや、経営情報交換を目的とした会員制クラブとつくりたい、といった熱い想いが読み取れる。
当時のトラベル懇話会の方針は、純然な勉強会であること、会員のための会であること(当時は例会の代理出席は認めないとしていた)、政府のような介入を排する、というもので、そのリベラルさがうかがえる。

やがて会員数も増え、1990年は76名、そして92年には107名と、初の3桁に増加、その後も会員数は増加の一途をたどり、1996年には159名にまで達する。

しかし旅行自体はその後、変革期を迎えることになる。2001年の米国同時多発テロ事件により海外旅行市場は一気に冷え込んだ。またビジネス面でも燃油サーチャージやオンライン旅行会社の台頭、航空会社のコミッションカットなど大きく変貌しつつあった。

トラベル懇話会もその荒波に合わせ活動も変化してきた。具体的には、政策提言を国交省や日本旅行業協会に向け発表するようになる。世界的な感染症パンデミック以前は、2006年、2013年、2018年の3回にわたり発表している。

当初の設立趣旨は、研鑽のための勉強会や業界ネットワークの団体であり、「懇話会」という呼称はその行動と合致したものだったと思う。

しかしその後は、ツーリズム産業の発展に向けた提言などもおこなう一歩踏み込んだ団体へと発展してきている。

それを考えると、「第1幕」にあたる創立時の、勉強と研鑽と交流という活動を主目的としてた当初の名称「懇話会」には最大の敬意を払いつつ、政策提言など一歩踏み込んだ「第2幕」は、活動内容に沿ってその名称をふさわしい団体名に変更するタイミングではないかと思う。

経済界に目を向けると、「経済同友会」がある。同会は企業経営者が参加し、先験的な視野から、国内外の諸問題について考え、議論し、政策提言をおこなっている。

観光産業は多岐に渡る分、それぞれの業界での団体はある。ただそれがゆえ、今回のパンデミックでは、観光産業ならではの提言を発したものの、観光産業が一丸となった「ワンボイス」ではなく、連名での発信が多く見受けられた。

こんな機会だからこそ、日本の経済に大きく貢献している観光産業の「ワンボイス」を実現すべく、第三者からみて名称だけでも理解してもらえるような団体名にしてはどうか。
例えば私案ではあるが、「観光経済同友会」を提案したい。この名称であれば、政財界から容易に認識してもらえるだろう。

文字通り、「名は体を表す」である。

著者:鶴本 浩司(トラベルボイス株式会社)

掲載日:2022年03月31日