コロナ禍が発生し早1年半が経過しようとしています。旅行業はこの間いったいどれほどの経済的な生産活動ができたのでしょうか?世界中の航空会社の国際線運航が停止し、事業の根幹となる商品要素が封殺されたわけです。外部要因なので仕方がない、とステークホルダー(顧客・社員・出資者など)に言い訳はできるだけの確固たる客観要因はあるわけですが、経営者である自分自身への言い訳にはなりません。私は、この間の不作為が将来的な後悔とならないよう猛省し必死にトランスフォーメーションの道を探っています。
私の会社は、旅行商品(主にFIT型商品)の販売を自動化するためのシステム開発に重点を置いてきました。システム運営においては、「スケーラブル」という考え方が根付いています。これは、特にクラウドサーバーでの考え方ですが、使った分だけ費用を払うということが「スケーラブル」の考え方の基礎です。Webの商売では突然沢山のアクセスを受ける(例えばテレビで紹介された等)ことが頻繁にあります。その度にサーバーがダウンしてしまっていてはせっかくの商機を逃します。そこで、アクセス量に応じてサーバーを冗長化(伸び縮み)させ必要量のみを使用するということを常態的に行っています。つまりサーバーコストは変動費化しているのです。
一方、今回のコロナ禍で経営者の多くが一番強く感じていることはおそらく「固定費の大きさ」です。固定費が変動費化できればいいのに、と感じておられる経営者は多いのではないでしょうか?旅行業の場合、固定費の多くは人件費であり、人はサーバーのようにはいかないわけですが、これからの時代の経営において、人件費が変動費化できる方法論はあるはずだと私は考えています。例えば主に流通分野においては、他業界も含めた他社とのリソースの持ち合いや技術・サービスの共同化の取り組みは驚くほど進んでいます。経営環境の変化の中で、今まで人件費として捉えていた様々な業務に関するコストを、結果として変動費化する試みは、これから益々進みます。
旅行業でもサービス品質を高める差別化は特定技能(知識)を持つ人材から生み出されることは否定しませんし、今後旅行業が産業として発展するためにはそのような高度化人材はますます必要になります。ただ一方で汎用的な流通業務については、今こそ固定費を変動費化する構造改革を積極的に指向してみる必要があるのではないでしょうか?
著者:岡田 健(エアプラス株式会社)
掲載日:2021年06月14日