Voice アフターコロナの観光業
新型コロナウイルスの発生から 1 年が過ぎた。今までに SARS や鳥インフルエンザ等、様々なウイルスや災害が発生したが、人類はそれらを克服してきた。しかしながら、今回のウイルスは過去に例を見ない形で人類に影響を与え続けている。これはウイルスの強弱だけではなく、人災とも言える部分も少なくないと思う。国によっても対応は様々である。現状ではワクチンの接種次第という解決方法のみである。世界各国ではアフターコロナの経済活動をどのような形で進めていくかが議論され、早期に実行に移している国もある。我々観光業の部分だけを切り取れば、残念ながら日本の指針が見えてこない。国内旅行、海外旅行、訪日旅行、どれを取っても方針が今一つ明確でない。所謂マイルストーンの設定が不明確である。マイルストーンを設定し、進めていくべき工程の中で、重要となるポイントがどこにあるのか、遅延が出てしまうとプロジェクト全体に大きな影響を与えるポイントはどこなのかを明確に把握できる。マイルストーン毎に進捗や結果を確認することで、万が一トラブルや遅延があってもその次の工程に必要な修正やスケジュールの練り直しが可能になる。国にとっては、そんな事よりもっと重要な案件が山積だと言われるかもしれないが、我々現場で指揮を執っている者にとっては、ただ悶々と日々が過ぎていくように感じられる。
海外旅行の安心・安全を担ってきた我々には、ただ我慢しろと言われているようである。旅行業界(国内旅行、海外旅行、訪日旅行)が進めていくべき方向を一つに纏め、それに沿って行動を起こすことこそが、最も重要であると思う。是非、決定権のある然るべき組織がその旗振りを行い、全ての観光業界の指針(マイルストーン)を決定していただきたい。そうすれば、その後は各業界団体が実行していけば良いだけだ。アフターコロナの人類は、ビフォーコロナから何を失い、新たに何を得るのだろうか。全てがマイナスになるとは到底思えない。観光業界が今欲しているのは将来の夢や希望である。それが無いが故にマイナス思考に陥っている。今を耐え抜き、改めて前進するためには将来の夢や希望、つまり目に見える目標が不可欠である。一番恐れているのは日本だけが取り残され、観光業が壊滅状態になることである。この声が届き、復活に向けた道筋が示され、大きなうねりが起きることを願うばかりである。

著者:大畑貴彦(株式会社サイトラベルサービス)

掲載日:2021年05月19日