Voice コロナ禍における出版業界のこと・当社のこと
   JTBパブリッシングの今井です。日頃よりトラベル懇話会会員の皆様には格別のご高配を賜り心より御礼申しあげます。今日は「VOICE」に投稿する機会を頂戴いたしましたのでコロナ禍における ~出版業界のこと・当社のこと~を少しお話させていただきます。
 出版業界は極めて厳しい状況が長い間続いており、2019年の売上高は1996年~1997年の出版全盛期の売上高(2兆6000億円)の50%以下になっています。しかし昨年は大きな動きがありました。皆様も多くの方がお読みになったと思いますが「鬼滅の刃」が爆発的にヒットし、業界全体の売上高は1兆6100億円を超える年となり、久しぶりに明るい話題となりました。しかし一方では電子書籍の伸びに反して全国に23,300店舗あった書店が昨年は既に12,000店舗まで減少しています。
 さて当社のことをお話します。当社はJTBグループの出版会社として2004年にJTBから分社しました。JTBグループの出版の歴史は古く、JTBが誕生した1912年(当時の社名はジャパン・ツーリスト・ビューロー)には機関紙「ツーリスト」を創刊し、1924年には「旅」を、翌年には現在の「JTB時刻表」である「汽車時刻表」を発行しました。1947年(昭和22年)には出版事業を専門に担う組織として当社の前身にあたる出版部を設立しました。
 現在、当社の発行物は「るるぶ」が主力であり、当社の売上の1/2を占めています。「るるぶ」は1984年に創刊号である「るるぶ 京都」を発行し、以降発行を重ね2010年、通巻3791号を発行した時点でギネス社に「発行点数世界最多の旅行ガイドシリーズ」として認定されました。その後も発行を重ね2021年3月現在で通巻5844号、約4億8000万部を発行しています。
 そんな「るるぶ」ですがコロナ禍で大きな打撃を受けています。「旅行に行かなければガイドブックは売れない」は、自明の事実です。そのため、当社の売上の半分を占める「るるぶ」の2020年度上期計の売上高は「前年比一桁」まで激減しました。2020年10月~11月にGo Toトラベルの国内旅行の増加に伴い、国内の「るるぶ」の売上はある程度回復しましたが、それでも年間計の売上高では前年の20%~30%程度です。
 「るるぶ」は「見る・食べる・遊ぶ」の語尾を重ねた「造語」ですがコロナ禍の影響により旅行自体が自粛される中で、現在では今までの「るるぶ」に加え、「知る・創る・学ぶ」という「児童書や趣味やライフスタイル」に特化した新機軸の「るるぶ」を発行しています。「るるぶ ONE PIECE」「るるぶ アズールレーン」「るるぶ 新日本プロレス」「るるぶ めいろでたのしむ にほんちず」等は好評な『新機軸の「るるぶ」』です。是非実際にお手にとっていただけましたら幸いです。
 ツーリズム産業の回復にはまだまだ時間がかかりそうです。ツーリズム産業の回復が日本経済界回復には不可欠です。それまで共に歯を食いしばって頑張りましょう。
 

著者:今井敏行(株式会社JTBパブリッシング )

掲載日:2021年04月16日