Voice 温泉をつうじた健康づくり
日本健康開発財団の石田心です。前職のPTS時代は個人店頭や法人営業、あるいはクルーズで皆さまと共に観光産業の繁栄に向けて取り組んでおりましたが、JTBとPTSの経営統合後に現職へ移り、医療と観光を繋ぐ架け橋を目指して、コロナ禍で彷徨しながら取組んでおります。
まず、始めに一般財団法人日本健康開発財団の紹介をさせて頂きます。当財団は昭和49年(1974年)厚生大臣認可の財団法人として設立され、今日に至るまで主に健康づくりや疾病予防の分野で事業を行ってまいりました。現在は温泉に関する研究調査、人間ドック健診を中心とした総合健診事業、事業主や健康保険組合と連携した健康増進事業、医療インバウンドを中心としたメディカル&ヘルスケア事業を行い、広く国民の健康づくりに寄与すべく日夜事業にあたっております。
また、当財団では温泉医科学研究所が中心となり、環境省が進めている「新・湯治」の調査研究を行っております。旧来の湯治文化を大切にしながら新たな湯治文化を育むために全国の温泉地全体での療養効果を把握し、今後の温泉地のあり方を考察しています。
また、昭和63年、当時の厚生省、現在の厚生労働省の長期施策「第2次国民健康づくり対策[アクティブ80(エイティ)ヘルスプラン]」が制定されました。その後平成元年には国民が安全で効果的な健康づくりに取り組める施設の整備を図ることを目的として、温泉利用型健康増進施設認定制度が発足しました。現在は施設の認定事務や温泉入浴に関する人材育成講習を私どもで担当しています。https://www.jph-ri.or.jp/onsen-nintei/list/index.html
それでは、厚生労働省認定の温泉利用型健康増進施設とはどのような形態の施設なのかご紹介します。施設の認定要件は様々な取り決めがございますが、ここでは端的にその性格を申し上げたいと思います。まず、設備面では温泉による温浴施設と、運動器具を備えた運動施設を一定条件の下で総合的に整備します。
次に、これら設備を活用して運動と温泉入浴を実務指導するコーチ役の指導者が、利用者の健康状態に寄り添いながら、健康増進をお手伝いします。昨年、令和2年12月現在の全国の温泉利用型健康増進施設は全国で22施設が認可されています。このうち環境省が推進している国民保養温泉地の指定区域内で営業している施設数は6か所となります。
いわば、この制度の利用特典でもあり、健康づくりという有形無形のメリットの他に利用者の家計支援策として有効なのが、医療費控除の認定制度です。これは、温泉利用型健康増進施設において、一定の方法により施設を利用した場合、そのための費用のうち、「施設使用料」「入浴指導料」「往復交通費」が個人の所得税での医療費控除の対象となります。過去の実績件数は決して多くはありませんでしたが、ここ数年は利用者数が増加してきています。特に令和元年度は397件、対前年比で148%と大きく伸びました。
このように温泉利用型健康増進施設は、端的に言えば温泉とスポーツクラブでコーチをつけながら健康づくりができるばかりでなく、所得税の医療費控除の対象にもなるという仕組みです。「一粒で三度美味しい♨」、皆さまのご利用を心からお待ちしています。

著者:石田 心(日本健康開発財団)

掲載日:2021年03月03日