Voice 映画の世界が現実に!?
私は映画が好きでよく観る。特に最近は、Amazon primeアプリで旧作を含めランダムに鑑賞するのが趣味になっている。ウイルス・パンデミック映画をご覧になった方も多いと思うが、新型コロナウイルスが流行し、過去から観た映画で想うところを書きたいと思う。

1997年の作品でダスティン・ホフマン主演の「アウトブレイク」はアフリカの小さな村の出来事が全米を震撼させるモターバ・ウイルスを封じ込める物語だが、宇宙服のような防護服を着て登場する主人公は私の中では単なる映画の中のワンシーンでしかなかったが、コロナ禍の今では毎日のTVニュースで当たり前の風景になっている。また、右を向いても左を向いてもマスク姿はコロナ前では考えられなかった。正にこんな時代が来ようとは!!
映画に出てくる患者は目や鼻から血を流し、白けた皮膚が気味悪い姿で、このウイルスは恐らくエボラ出血熱を想定したものと思われるが、映画から20年以上経った2019年にコンゴ共和国でエボラが大流行したのは記憶に新しい。ただ、遥か遠いアフリカの一国での出来事で当時はニュースとしては知っているが、所詮他人事。しかしパンデミックにならなかったのは毒性や致死率があまりにも高く、遠出する前に死亡してしまうからであり、逆に言うと新型コロナウイルスが怖いのは見た目の怖さが無いため、無症状の人間が感染を知らずに移動したために世界的流行に拡がったのは言うまでもない。グローバル化であっという間に世界に感染が拡がるのは当然の成り行きかもしれない。映画の最初の画面でノーベル賞学者J.レダバーグの「人類の優位を脅かす最大の敵はウイルスである」のメッセージが出るが、今だから余計に実感できる。

次にコロナウイルス・パンデミックを予想していたような映画が2011年公開の「コンテイジョン」だ。真っ暗な画面に響き渡る「静かな咳」から始まるオープニングはまさにパンデミックを予想させ、観るものを震撼とさせる。新型コロナウイルスと似た状況であるこの作品は様々なことを学ぶ切掛けになる。買い占めに殺到するところは現実に起こったし、接触禁止の為に家に閉じ籠る様は、今私たちが実際にやっていることで現実味たっぷりである。
映画では情報に煽られて人々がパニックを起こし各地で暴動が発生、ワクチンの接種順番を抽選で決める為、誘拐事件や様々な不正等、この先決して起こってほしくない様子も描かれている。
映画の中では発生から4か月余りで死者2600万人となっており、1918年のスペイン風邪同様、世界人口の1%にあたる7000万人が死ぬかもしれないと言っている。新型コロナはカウントされ始めた2020.1/23から1年で世界の感染者数は1億人に迫り、死者は200万人を超えるが、これも映画のようにならないことを祈るばかりである。また、映画の終わり方についてもワクチンが世界を救うというハッピーエンドではないところについても今、接種が始まったワクチンが結果、世界を救うことになるのか不安にさせる要素があるのも不気味だ。
今回の新型コロナウイルスの流行はまさにスペイン風邪の流行から100年が経つが、コロナ禍が「100年に一度の禍」といわれる所以であると思う。
この映画は10年前に制作されたにも拘らず、その内容が今まさに我々が実際に経験していることに酷似していることを考えると実に感慨深い。
まだ、ご覧になっていない方には是非この機会にご覧頂きたいお勧めの良作である。

最後に、我々は幾多の困難に遭遇してきた。2001 年には米国同時多テロが発生、2003 年 SARS 大流行、2008 年リーマンショックによる世界同時不況、2009 年新型インフルエンザ流行、2011 年東日本大震災発生、 2015 年のISILによる日本人ジャーナリスト殺害からパリ同時テロ~2017年にかけてのヨーロッパ各地でのテロ事件等、現在に至るまで何も起こらなかった年はないといっても過言ではないと思う。その時々で知恵を絞り、その難局に立ち向かってきた。今回のコロナ禍は別格かもしれないが「何事も必ず終わりがある」・・・を信じてこれからも希望をもって頑張りたいと思う。

著者:生田欽也(株式会社エアサーブ)

掲載日:2021年01月20日