Voice 私の信念
「中尾さん、旅は文化だよ」と、トラベル懇話会会員の古木様から声をかけられて、爾来20年「観光産業を未来につなぐ企業年金」を名刺の表に、「私の使命は観光産業に働く人々の老後保障の発展と充実です」を名刺の裏に刷り込み、旅行業界の皆様に社員の福利厚生の充実、人材確保の一助に役立ちますと活動を続けてきました。

さて、私が日本以外の文化に触れたのは、約40年前にタイ王国を訪ねたのが始まりで以後フィリピン、ラオス、ミャンマー、インドネシア、バングラディシュ、ネパール、ケニアなどの当時の発展途上国の地域住民と直接触れ合ったことです。もっとも文化と言えるのかと疑問を感じますが、文化の一部としての極貧状態に触れたことです。
特にバングラディシュは当時世界の最貧国でしたが、コレラ患者は鉄製のベッドに寝かされ汚物は床に、宗教上の教義なのか道端には死体が、また、らい患者が多数浮浪者に交じり物乞い集団で押寄せてくる場面に遭遇しました。これらは社会保障制度を創設できない国家財政だからだと、このような貧困状態をなくすためには先進国は今以上に援助を強化しなければと思いました。インドネシアでは終戦後の日本のように多産世帯が多く日本人が珍しいのか多数の子供たちが我々の後をついてきました。母体の健康保護のためにも産児制限が必要と話しかけたところ、子供が少なければ親が老いたときの生活を誰が面倒見るのです。子供が多ければ多いほど子供の負担が軽くなると世代間扶養の議論になりました。

いずれにしても年金保険・医療保険制度の存在が必要だと感じました。
日本でも全国民が年金保険・医療保険制度に加入することとなった昭和36年までは最貧国との年間収入の格差は有るのは当然ですが、社会保障制度が充実していないことによる世帯の貧困状態は同様な状況にあったと思います。

今更ですが、皆様方に企業年金制度の加入をお願いしている私の原点が当時の発展途上国の社会保障が存在しない故の貧困に触れた経験に有ると思います。
現在、政府は国民の老後生活の充実には公的保障だけでは不十分であるから、「投資運用立国」施策、つまり老後生活の資金は個人の自力努力で資産運用投資を実施しなさいとこの施策を推進しております。

しかしながら、大企業の社員のように何千万円も貯蓄を有する勤務者は別として、中小企業に働く人々には、勤務先の福利厚生としての退職金制度の充実が、つまり会社の支援を受けながら、迫りくる超高齢化社会を乗り切るための喫急の施策と捉えられております。
幸い、旅行業界の中小企業を対象とした年金制度が、JATA・ANTA会員を主な対象として設けられた「観光産業企業年金基金」が存在します。
中小企業が単独で退職金制度の一部としての企業年金制度を運営する事務負担を解消し、福利厚生が充実することによる社員の幸福感と会社や仕事に対する熱意を共に高める効果が期待できます。老後の経済的な不安の和らぎも職場への定着率も向上するとの効果も期待できます。

また、企業年金の積立金は会社の資産と区分して管理されます。社員の皆様から見れば安心で確実な老後資金の積立てができ、退職金(会社組織内積立)だけでなく老後資金の選択肢が確保できて老後生活の充実に繋がると思います。
観光産業企業年金基金は、平成27年に設立以来、旅行業界の皆様のご支援を賜り、年金資産約70億円、剰余金約22億円を管理する「健全・安全・安心」な企業年金として運営されております。

私は、旅行業界の裏方として今後も皆様方に観光産業企業年金基金に加入し社員力を充実することも「旅は文化」を推進する源となると訴えてまいります。

著者:中尾 信一(観光産業企業年金基金)

掲載日:2025年09月12日