最近、緊張感が増している台湾の金門島に行ってきました。台湾の金門島(キンモントウ)は、中国福建省の厦門(アモイ)からわずか数キロの距離に位置し、かつては国共内戦の最前線として知られていました。現在では、歴史的背景と自然の美しさ、そして両岸(台湾と中国本土)間の交流の現場として、多くの観光客を魅了しています。
金門島の観光の魅力の一つは、戦争の歴史を物語る数多くの軍事遺跡です。島内には、砲台や碉堡(監視塔)、地下壕などが点在し、かつての緊張感を今に伝えています。これらの遺跡は、金門国家公園や戦争博物館などで展示されており、訪れる人々に歴史の重みを感じさせます。
また、金門島は自然の美しさでも知られています。広大な砂浜や干潟、渡り鳥の観察地としても有名で、バードウォッチングや海岸散策が楽しめます。レンタル自転車で島内を巡れば、伝統的な石造りの集落や地元市場で新鮮な海産物や名産の「金門高粱酒」に触れることができ、歴史と自然が調和した穏やかな時間が流れます。
しかし、金門島の特異な魅力は、海を挟んだ対岸にある厦門の街並みを望むことができる点にあります。澄んだ晴れた日には、厦門の高層ビル群や港の様子がはっきりと見え、まるで手が届きそうな距離感に驚かされます。中国本土に最も近い台湾の島という立地は、歴史的には軍事的緊張の舞台でしたが、今は観光客にとっても独特の風景と物語を提供しています。
近年、金門島と厦門を結ぶ「小三通」と呼ばれる通商・通航・通郵の交流が進んでいます。2001年から始まったこの交流は、2008年には拡大され、現在では年間130万人以上の旅客が往来しています 。また、2015年にはアジア最大規模の免税店を併設した五つ星ホテルがオープンし、観光業の発展が期待されています 。
しかし、両岸間の交流には課題もあります。2024年には、金門島周辺の海域で台湾漁船が中国海警局に拿捕される事件が発生しました 。また、中国当局の船が台湾が設定した「禁止水域」を無許可で航行する事例も報告されています 。これらの事態は、両岸間の緊張を高める要因となっています。
それでも、金門島の住民は平和的な交流を望んでいます。地元のガイドや住民からは、「戦争の記憶を忘れず、平和の尊さを未来へ伝えたい」という強い思いが語られ、観光客としてもその歴史的責任を感じました。
金門島を訪れることで、台湾の過去と現在、そして未来を見つめる貴重な体験ができました。歴史の教訓を胸に、平和の尊さを噛み締めながら、多くの観光客にこの島を訪れてほしいと思います。
著者:出村隆行(株式会社ファイブスタークラブ)
掲載日:2025年08月06日