Voice 人のココロを動かすということ
昨年の11月1日付で入会いたしました。皆様どうぞよろしくお願いいたします。

現職の前はキャセイパシフィック航空(CX)に32年間勤務し、瓜生様の“心のふるさと(2024年10月寄稿文より)”でもある香港をベースにこの業界で長年にわたりお世話になり、2024年8月からはGDSというジャンルで新たなスタートを切っております。

CXでの最後の7年間は2017年に着任した人事総務部門において、自社の人員削減に始まりCOVID-19という、2003年に発生したSARSの比ではない荒波に翻弄される日々でした。それまで人事の経験などまったくなく、若い時は組合の中央執行部として社員側の視点で会社に物申す立場から180度転換し、正解と期限の見えない課題に向き合うことも少なくありませんでしたが、その中で最も頭を悩まされたものの一つは管理職・一般職を問わず、個性やスキルも異なるスタッフ一人一人の仕事に対する気持ちをいかに前向きにするか(特に会社の置かれた状況が厳しいこそ)、ということでした。それは現職に就き新しいメンバーと共に働く上でも直面する普遍的な課題でもあります。初めて投稿させていただく機会でかようにお固い話題となり誠に恐縮ですが、しばしお付き合いいただければ幸いです。

私は学生時代に最初の職業として教職を目指していましいた。結果的には一般企業へ就職(宮沢りえさんのCMで知名度を上げた三井のリハウスに1989年入社、リゾートマンションを販売する部署に配属され新人でもタクシーチケットを使えて国内外のリゾートエリア視察をさせてもらうなど、バブル景気の残り香を享受できた時代でした)したのですが、出身高校で教育実習もしてぎりぎりまでその夢を追い掛けていたものです。その原動力は中学時代の恩師であり、2・3年生時の担任として若くてエネルギー溢れる熱血先生(男性、剣道部顧問)への憧れによるものでした。今では許されない連帯責任でのビンタも日常茶飯事、教室の黒板上には敬愛する上杉鷹山の言葉(為せば成る為さねば成らぬ何事も成らぬは人の為さぬなりけり)が書かれた木彫りの額を掲げるなど、それはそれは昭和気質たっぷりの方でした。ゆえに生徒の受け止め方も様々で好き嫌いがハッキリ出る中、私はなぜかその先生に魅力を感じ、かつ根が単純ですので心酔するとまでは言いませんがかなり盲目的にその指導に準じていたように記憶しています。青くてまだまだ素直だったココロを動かされたことで自分の可能性を引き出してもらったことは間違いなく、その後の人生にも深く影響を及ぼしたといっても過言ではありません。

社会人になって様々な組織の中で徐々に責任ある立場になるにつれ、比例してPeople Managementをする上で人のココロを動かすことが必要な機会も増え、試行錯誤の日々は今も続いています。

幸いにも、CXの人事担当時代において私自身が強くココロを動かされる人と巡り会えたことがありました。それは自分より少し年上で日本に赴任してきたイギリス人のRegional General Managerで、言語の違いを超えて懐の大きさや豊かな人間力を感じさせる人でした。部下を信頼し仕事を任せてくれて、話し合いの際はどんなに忙しくご自身が難題を抱えていても“何か困っていることはないですか?”と声を掛けてくれる温かい配慮があり、かつ過去の確かな実績に基づく社内外での高いプレゼンスと上層部からの厚い信頼でしっかりと目指す方向に結果を導いてくれる、そんな気遣いと実行力にココロをうたれこの人のためなら精一杯頑張ろう!と思わせてくれました。

今の自分自身は社歴を重ねたにも関わらず道半ばで、還暦を迎えた今となっては“伸びしろ”の存在自体が怪しいものです。そんな悪戦苦闘の日々を送りながら折に触れ思い返している言葉があります。20代後半の頃に新聞のコラム記事でたまたま見かけた以下のものですが、深く心に刺さるものがありました。それ以来、私は「教師」を「上司」や「親」などに置き換えて、折に触れ自分自身に問うように心掛けています。

ウイリアム・アーサー・ワード
(William Arthur Ward, 1921-1994、アメリカの教育者)
平凡な教師は、言って聞かせる
良い教師は、説明する
優秀な教師は、やってみせる
最高の教師は、生徒の心に火を付ける
The mediocre teacher tells.
The good teacher explains.
The superior teacher demonstrates.
The great teacher inspires.

今後懇話会の皆様との交流を深めさせていただく中で、皆様の豊富なご経験に基づくヒントを“お裾分け“していただければ誠に有難く、ご指導ご鞭撻を賜りますようよろしくお願いいたします。

追伸:言わずもがなですが、旅は人のココロを動かす発見を得る特効薬ですね!Outbound促進のためにも、周囲の人々を巻き込んで旅の良さを再認識してもらうよう精進して参ります。

著者:柳沢 淳(トラベルポートジャパン株式会社)

掲載日:2025年03月18日