「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の波は、旅行業界にも押し寄せています。AI、IoT、ビッグデータ、顔認証……技術の進歩によって、旅はどんどん便利になっています。しかし、旅の醍醐味は「想定外の出来事」にあるのではないでしょうか?
そんなことを考えていた矢先、IT業界の友人6人と佐賀を旅する機会がありました。従来の「団体旅行」の概念を覆す、名付けるなら『自由すぎるDX団体旅行』。好きなタイミングで集合・解散しながらも、笑いとハプニングを共有できる不思議な一体感がありました。
【初日:全員集合?いや、すでにバラバラ?】
福岡空港10:00集合。しかし、すでに2名は前乗り。飛行機もバラバラ。羽田発の便が遅れるも、LINEでリアルタイム連絡しつつ何とか合流。早くもDXの恩恵を実感。
そこから電車で呼子へ。念願の「呼子の烏賊」を堪能。透き通った烏賊を見つめながら、「ここまで来てよかった」としみじみ。その後、ジャンボタクシーに乗り込み、伊万里焼を見学。歴史ある焼き物に感動しつつ、武雄温泉へ。のんびり温泉……のはずが、焼酎を求めて3,800円のタクシー代を払い黒霧島1パックをゲットする猛者も。
【2日目:焼き物と酒とハプニング】
朝から有田焼を巡り、美しい器でランチ。「一期一会」を言い訳に、帰りの荷物のことなど考えず、ついつい爆買いする一行。
午後は肥前浜の酒蔵巡りへ。夕方には駅前のちょい呑み店で「鍋島」三昧。地元の店員との温かいふれあいを楽しみながら、純米大吟醸から純米酒まで飲み比べ……これ、ちょい呑みどころか、もはや本格飲みなのでは!?
ほろ酔い加減で、この後旅は二手に分かれることに。2名は帰京、4名は嬉野温泉へ。帰京組は余裕をもって東京へ向かうはずが、福岡空港までの道のりでまさかの乗り継ぎミス発生。「ホーム間違えた!」「新幹線に変更!」「何とか東京便に間に合った!」とLINEで次々と流れる実況報告に、嬉野組は爆笑。DXのおかげで即座にリカバリーできたものの、最後まで気が抜けない旅だった。
一方、嬉野組は温泉に浸かり、ようやくホッとした……と思いきや、ここで事件発覚。先ほどのチョイ呑み「鍋島」三昧でどうやら2杯分多く支払っていたらしい。さらに、「これ頼んだっけ?」というのも紛れ込み、気づかぬうちに高級ホテル並みのサービス料が追加された気分に。DXの恩恵を受けた旅のはずが、この場面だけはアナログの洗礼をしっかり浴びることに(笑)。
【3日目:最後まで自由!それぞれの旅のカタチ】
翌朝、嬉野温泉の美肌の湯を惜しみつつ、思い思いの最終日へ。東京経由で越後湯沢へ向かうチャレンジャー、最後まで佐賀を満喫して福岡空港へ向かう者。それぞれが自由に旅を締めくくる中、語りきれないほどの爆笑エピソードが生まれた。こんなワガママな旅を計画し、受け入れてくれたすべての人に、ただただ感謝しながら、旅の幕を閉じた。
【DXが旅をもっと面白くする】
今回の旅を振り返ると、DXは単なる効率化の手段ではなく、旅そのものを「もっと面白くする」ツールになり得ると実感しました。LINEでのリアルタイム連絡がなければ集合すらままならず、急な予定変更や乗り継ぎミスも瞬時の情報共有で笑いに変わりました。DXのおかげで旅の自由度は広がりましたが、さらに活用できる技術があれば、もっと面白くなるはずです。
たとえば、AIが寄り道スポットを提案するアプリ、予定変更に即対応できるスケジュール管理アプリ、乗り継ぎミスを瞬時にリカバリーするアプリなどがあれば、ハプニングすら楽しめる旅行スタイルが生まれる気がします。
「団体旅行」という概念を覆した、自由すぎる旅。それぞれが好きなタイミングで集合・解散しつつ、笑いとハプニングを共有する不思議な一体感。何が起こるかわからないからこそ、旅はますます楽しくなります。次の旅行は、『好きな時に集まり、好きな時に解散するDX団体旅行』を試してみてはいかがでしょう。新しい旅の形が、ここから始まるかもしれません。
著者: 酒井和子(株式会社インテージテクノスフィア)
掲載日:2025年03月06日