2021年8月17日付のVOICEで「二足のわらじ」というお題で掲載頂き、すでに4年半が経ちました。私自身も67才と高齢者に属する世代になりましたが、(株)ユー・ティ・アイ・ジャパンと介護関係の仕事の「二足のわらじ」は変わらずの日々を送っています。コロナ禍を過ぎたこの4年半で、特に人材に関し何が変わって来たのか、旅行会社の視点は皆様にお任せして、別業種の視点からお話ししたいと思います。
皆さんは介護施設がどのような機能を持っているかご存知でしょうか。ご両親の関係でお世話になった方は多いと思いますが、簡単に言いますと3つの施設形態があります。医療法人が運営する「介護老人保健施設(老健)」は、介護を必要とする高齢者が病院から自宅へ復帰する前に、自立支援をするところです。社会福祉法人や自治体が運営する「特別養護老人ホーム(特養)」は、高齢者の生活支援と介護サービスが中心でついえの棲家です。この2つが「公的施設」と言われています。有料老人ホームは主に民間企業が運営し、高齢者に多彩なサービスを提供する「民間施設」です。私が関わっているのは、前者の公的施設である老健と特養で、主に、介護職を希望する海外人材を施設に受入れる一連の仕事をしています。
介護業界の人材不足は深刻で、日本人の人材で言えば若手よりも50代以上が主流で、70代も珍しくなく正に老々介護を目にします。今年は後期高齢者(75才以上)が2,000万人以上となる年で、各施設で働く人材が不足し定員まで受入れができない現象も出ています。募集しても応募が来ないので紹介会社を利用して入職した人材が、6ヶ月も立たずに辞めてしまう、しかも紹介会社には年収の30~35%を支払い、年間の採用費用が経営に悪影響を与えている例が多くみられます。また、介護現場にロボット化やIT技術の導入も進んでいますが、どうしても人による作業が多く省力化できないジレンマを抱えています。このような状況でますます介護への外国人材登用が顕著になっています。
海外人材が日本で働くには、高度人材以外に、業種が限られていますが技能実習生か、コロナ後に広まった特定技能の在留資格が必要です。介護には他にEPA介護福祉士候補者と言うベトナム・フィリピン・インドネシアの3ヶ国より、各国300名の看護大学・看護専門学校卒業生のみ来日できる制度があります。私の仕事は、これらの制度のうち技能実習生(正確には技能移転のための訓練生)と特定技能で日本に来る人材を、母国の日本語学校で育て、各施設の募集に合った人材をマッチングさせ、入管に在留申請・在留許可を得て施設に入職出来るよう、一連のオペレーションの作業・管理をしています。
以前は日本で働く外国人材の方々は、日本が安全・安心な国で平和や文化に憧れて来る人たちが多かったですが、現在は、賃金が韓国や台湾より安く、円安で母国に送るレートで数年前より20%以上も安くなったなどデメリットが目立ちます。今後は、アジア圏の成長により自国の賃金増で海外で働く人材が不足したり、人材不足の国々との競争でいかに日本を選んでもらうかなど課題が浮上しています。その対応の1つとして今取り組んでいるのは、受入れた外国人材を日本人と同様な人材育成プログラムで育て、介護福祉士の国家試験に合格し、在留資格「介護」で施設で働き続けて頂くことです。
これからしばらく、この「二足のわらじ」状態は続くかもしれません。しかし、次回のVOICEがあるとしたら、旅行業の切り口で発信できればと思います。
著者:片桐卓弥株(株式会社 ユー・ティ・アイ・ジャパン)
掲載日:2025年02月28日