丁度、今年一年を振り返る時期(2024年12月)となり、慌ただしく過ぎていった自身の一年を振り返ってみました。
やはり、真っ先に思い起こされるのは、久しぶりに訪れたパリ、オリンピックへの出張に他なりません。コロナ禍あけの久しぶりの海外出張というのもありましたし、長年スポーツイベント関連の仕事に携わってきた自分にとって、やはり、オリンピックの空気は心躍るものでした。
開会式当日の朝、パリに到着。街中に向かう途中の渋滞や至るところでの道路封鎖、会場付近にあふれるユニフォームを着たボランティアとそれ以上に存在感のある警察官の群れ。不便さや少し奇異に映る光景も、イベント盛り上げの要素のように映ります。
生憎、開会式は雨模様となり、セーヌ川沿いでの観覧を途中で断念してホテルやバーのテレビで開会式を楽しんだ観客も多かったと聞きました。
それでも、自国開催を楽しんだパリ市民や世紀のイベントを楽しみに集まった観光客の静かな熱気を感じる夜だったように思います。
翌日は、柔道会場に足を運びました。飛び込んできた光景は満員の観客席です。そしてフランスの選手が出てくるたびに、観客席で足踏みが起こり、地響きとなって会場中に響き渡ります。会場が揺れる感覚は、仮設の階段が心配になるほどでした。
その光景に私は感動を覚えたのです。
2021年の東京オリンピックの際、私は会社からの出向で組織委員会の仕事に従事していました。そこに関係する全ての方たちが「無観客」という事実を残念に思ったことは言うまでもありません。あれから3年、目の前に広がる景色と声援は格別なものに思えました。
改めて、観客が大会の一部であることを認識させられたのです。
現地パリで、当時の組織委員会の多くの仲間と会う事がありましたが、みな思う事はどうやら同じだったようで、「お客さんいたね」「やっぱり良いよね」と、会話の端々に必ずこのような言葉を口にし、その度に私は大きく頷いていました。
今、あの柔道会場の光景を思い出しては、自分たちの仕事に投影しています。アスリートが最高のパフォーマンスを発揮できる環境を整える事、あの会場の高揚感を一人でも多くの人たちに届ける事、等々。その為に出来る事はまだまだたくさんあります。
パリ出張最終日のランチだけは、一人シャンゼリゼのカフェで観光客っぽく過ごし、滞在3日間の出張を終えて帰国しました。
あの柔道会場で改めて感じることができた高揚感と一緒に。
著者:香川 晴美(近畿日本ツーリスト株式会社)
掲載日:2024年12月18日