Voice 人生初めての派遣社員業務
 2021年、コロナ感染症の真っ只中、縁がありまして5月から12月までの7ケ月間成田空港第2ターミナルにて派遣社員として入国に係る検疫の仕事をさせていただきました。この時の成田空港は、人々がほとんどいない閑散とした建物内に、ただ成田空港の案内ビデオが無機質に流れており、響き渡っていました。またフライト出発電光掲示板も、いつもは掲示板いっぱいに表示されるのに、一日で20便くらいしか表示されておらず、始めてみる光景で大変驚きました。

 4月に派遣会社の方と面接、仕事の内容説明を受けました。内容は、その当時海外からの入国者の条件として、3つのアプリを自分のスマホに設定することが必須条件で、それらをスマホにダウンロードするお手伝いの仕事をやっておりました。ダウンロードしない、できない方々は入国できないという大変厳しいシステムでした。勤務は早番、遅番のシフト制で、私は遅番で15時から23時までの勤務でした。当然仕事終了時には公共交通機関がありませんので、仕事期間中はホテル住まいになります。メンバーは早番、遅番其々40名位で、そのうち90%が20代、30代の若者、そのうち30%が外国人でした。当然コロナ禍真っ只中なので、防菌服、防菌眼鏡、手袋着用で、なかなか経験できない服装でしたが万が一のためのスタイルでした。とはいえ、在勤中の7ケ月間でスタッフから2~3名の感染者が発生し、厳しい仕事だなと感じたことを覚えています。スタッフの日本人の若い方は休職、解雇になった人たち、外国人は全員が特定技能職で来ている方々で、勤め先が閉鎖、倒産になりこの仕事を選ばざる得なかった人たちでした。本当にコロナ期は私も含め皆大変だったと思います。そして全体の10%しかいない60代以上の方々は個人事業主の方が多く、社労士、行政書士等、やはりコロナ期でお客様がいなくなったということで、この仕事をされていました。私自身は、特殊言語を話せるということもあり、必要以上に、働かされたような気がします(笑)。しかし、色々な国の方々に会え、コロナ禍での各国の色々な話が聞け、日本が世界で一番厳格な水際対策を行っている国だなと認識しました。

 一方、通常検疫を通過するのに数秒もかかりませんが、この時は1時間半から2時間はかかっていたようです。入国後の一定期間の隔離というのは色々な国で行われていたようですが、入国者を入国後アプリで一定期間管理するというのは、日本だけだったように聞いています。中にはアプリをダウンロードすることを拒否され、その場で帰国された方、手持ちのスマホ(特に中国製)のバージョンがあわず、仕方がなく高額のレンタルスマホを借りざるを得ず大声で怒鳴る方等日本のシステムに不満を持たれた方が少数ではなかったことも事実です。

 皆恐れていたコロナ感染症、感染された方がいるかどうかわからない環境の中で、若い方中心に一生懸命頑張っていた若い方々をリスペクトしています。もう二度とこのような、世界が止まってしまうようなことが、起きないことを、切に願っております。

著者:吉田 博行(ターコイズ株式会社)

掲載日:2024年10月23日