Voice コロナと海外教育旅行
思い返せばトラベル懇話会の会員会社のほとんどが、悪夢のように長引いた新型コロナ感染症の対応に追われ、これまで約4年間にわたり事業継続の為に、多種多様な努力をしながらなんとか生き延びてきたことに、まずは拍手を送りたいと思います。コロナでトラベル懇話会の会員も激減するかと予想しましたが、最近では新規会員も増え、業界の活性化に向けて各社が前向きに進みつつあることに心から敬意を表します。

1964年に創立以来、海外教育旅行を専門に業務を継続してきた弊社にとって、観光庁が国内旅行や訪日旅行から、海外旅行の促進へとようやく動き始め、将来の日本を担う若者を海外へ送り出す国際交流の推進に言及したことは、大変喜ばしいことと考えます。 2020年の3月以降、新型コロナ感染症の蔓延により、安倍政権の下で緊急事態宣言が発令され、学生たちが登校できなくなり、学校が閉鎖された為、海外研修を担当されていた先生方とのコミュニケーションはほぼ閉ざされた状態となりました。 それから2年後、1922年の春、メールマガジンで連絡を取り続けていた先生方から、国際教育推進の為、海外へ動き始めようという声が高まってきたため、弊社の得意分野である海外研修への提案を各学校に対し積極的に再開しました。新型コロナ感染症がまだ完全に沈静していない中での企画実施への道筋は決して平穏ではなく、海外研修中に多くの感染者が出る事が予想された為、主な研修地である、北米・カナダ、オーストラリア、イギリスの3拠点に部長以上の管理職を配置し、各地域での指揮、命令系統を統一し、本社役員とつないで、迅速な対応ができるようにしました。また普段より添乗員の人数を増員し、陽性者のケア専用のスタッフとして活動させ、不安を感じている学校や保護者に対し、ほぼ毎日、現地添乗員、責任者から直接、電話やメールで連絡を入れました。このように迅速で確実な情報提供をしつつ、陽性者を迅速に、かつ安全に帰国させたことで学校や保護者から大きな信頼感が得られ、感謝されたことが、ポストコロナにおいて、比較的早めに海外教育旅行を復活することができた大きな要因と考えます。今年に入り、学生の海外研修だけでなく海外への一般観光客も徐々に増え始め、4月の初めには桜を見に来た海外からのお客様も多く、日本国内が旅行客で活気が戻ったことは旅を生業とする我々にとっては感慨深い現象でした。思い返せばコロナ騒動も今や思い出となりつつあります。最近では新型コロナ感染症への不安は縮小されましたが、今度はウクライナやパレスチナでの戦争が勃発し、不安感と共に円安も進み、航空運賃や世界的な物価の上昇も相まって海外旅行に対するマイナス要因が増えてしまったことは非常に残念に思います。しかしながら、人類の祖先がアフリカからすべての大陸に広がっていったように、旅は人間の本能であり、多様な文化や大自然に対する探究心、そして心から感動する旅へのロマンは変わらず、今後も海外旅行は益々増えていく事と確信しています。

先月はチェコのプラハにて開催されたヤング・ボヘミア国際青少年音楽祭に高校生の吹奏楽団を参加させ、演奏公演とパレードを通して世界の青少年たちとの交流プログラムを行いました。若年層の国際交流が非常に大事であるとの観光庁長官による談話にあったように、弊社が創業以来、約60年間続けてきた国際教育旅行の重要性を今回再認識するとともに、人種や国籍を超えてお互いを尊重しながら交流を継続することが、相互の理解を深め、ひいては将来の世界平和に通じるという信念を持ちながら、これからも新しい形の国際教育旅行や文化交流をさらに広げていく決意を新たにしました。

著者:田中 國智(株式会社ATI)

掲載日:2024年04月11日