Voice 有事の対応を考える
 はじめに、この度の令和6年能登半島地震により、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。 また、1月2日に発生した羽田空港滑走路における事故で、お亡くなりになられた海上保安庁職員の方々に対し、深くお悔やみを申し上げます。

 1月2日の羽田空港滑走路における事故においては、該当便に弊社のお客様のご搭乗はなかったものの、1月1日の能登半島地震では、地震発生時に約1,200名の弊社ツアーのお客様が北陸方面に滞在されており、そのうち約300名が震源に近い能登半島に滞在されておりました。

 能登半島では、宿泊施設の客室の利用が困難であったことから、宿泊施設のロビーや避難所である学校や公民館、および貸切バスの車内で一晩を過ごされ、当日北陸方面から帰着予定のお客様に関しましては、新幹線や特急列車の車内で足止め状態になるなど、大変多くのお客様が地震の影響を受ける事態となりました。

 一番大きな影響を受けたツアーでは、82名のお客様が奥能登の大動脈である珠洲道路を貸切バスで走行中に被災し、周辺の道路の陥没やがけ崩れの影響で貸切バスの走行が不可能となってしまったため、道路上に駐車した貸切バス車内で二晩を過ごすこととなりました。さらに地震発生2日後の1月3日には、救助に向かったマイクロバスで道路の大渋滞の中、夜を徹し10時間30分かけて奥能登から金沢まで移動をされ、1月4日の午前中に全てのお客様が大きく体調を崩されることなく、北陸新幹線にて無事に帰京されました。
 地震発生後は、奥能登方面の通信事情が非常に悪く、本社サイドでは現場の状況を把握することが困難を極めましたが、現場の添乗員およびバスドライバーが協力し、食料や飲料の確保およびトイレの場所の確認などお客様の安全を最優先に考えた行動をした結果、大きく体調を崩されるお客様がいなかったことと考えております。

 ここで、該当ツアーに参加されたお客様のうちお一人の方より、帰路の北陸新幹線車中から弊社お客様相談センター宛に御礼のメールをいただきましたので、ご紹介させていただきます。

(以下、お客様からのメールより抜粋)
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この度はとても素敵なツアーがこのような状況に巻き込まれてしまい、本当に悲惨な状況でしたが、添乗員の〇〇さん、直江津観光バス運転手の△△さん、そして一緒に行動した別ツアー添乗員の〇〇さん、富山地鉄観光バス運転手の△△さん、また、道路事情が極めて悪い中、危険を顧みず柳田小学校まで物資をとどけてくれた富山地鉄観光バス本社の方々、彼等が誰1人かけていたら、この三日間私達計82名が無事に過ごすことはできなかったと思います。震源地で皆同じく被災者なのに、私達のためにほぼ寝ずにBCPも考えながら救助の連絡をし、ツアー客がパニックにならないように動いてくださり、心から感謝いたします。
どうか、皆さまへ感謝の意をお伝え頂きたくメッセージをお送りさせていただきました。

最後に旅行会社のバス手配部門の方々が危険な道を私達を勇気づけるためにも来てくださり、とても素敵な差し入れもご用意頂き本当にありがとうございます。
また少し落ちつきましたら、引き続きクラブツーリズムさんの素敵なツアーへ参加したいと思います。

東京都 40代女性のお客様
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 弊社では、地震発生後すぐに緊急対策本部を本社に設置し、役員・管理職・担当者が夜を徹して情報収集や各部署への対応指示にあたりましたが、その他にも自宅や帰省先等で多くの社員がお客様の対応にあたりました。
 今回、ご紹介させていただいたお客様からの御礼メールは弊社社員を勇気づける非常に有難いメッセージでありましたが、今回のような有事において、ご参加頂いたお客様にしっかりと寄り添い、ツアー中だけでなく、帰着後のケアまでの対応を行うことの重要さを改めて認識し、旅行会社の存在意義を実感した年始となりました。

著者:酒井 博(クラブツーリズム株式会社)

掲載日:2024年01月16日