Voice 海外旅行の現状
観光庁とJATA(日本旅行業協会)が水際対策を終了したことを踏まえ、5月10日に「今こそ海外!宣言」を共同で発出してから半年が経過しました。我々アジア地域は徐々にではありますが、前進しているのは間違いありません。しかし全方面が順調に回復しているわけでもありません。一番の原因は円安ですが、それに加えて燃油サーチャージの高騰だと思います。また、訪日外国人旅行者が順調に回復し、既に2019年7月同月比で8割に迫り、日本人の海外旅行者にとっては日本発の座席の確保が厳しい状況になっています。現地仕入れ環境の悪化も円安が原因だけだとは片づけられない状況です。旅行会社の皆様にはこの状況を理解していただき、ホテル等のデポジットの早期の支払いの調整や、毎月の支払いタームの早期化、支払い回数の増加等を徐々に進めて頂き、本当に感謝しております。しかしながら現地ホテル等の仕入れについては決して2019年並みに戻ったとは言い難く、クレジットの解除、クレジット額の減額やクレジットタームの短縮化に移行するところが増加しています。今後もこの傾向は継続すると言われています。現実問題としてまだツアーオペレーターの立替は継続しています。これもホテル側の言い分としては、日本からの客はまだ戻っていないものの、各国からの客が増加し、支払いについても早期に行われていると聞きます。この事実が継続した場合、今後の海外の仕入れについてはツアー出発前の支払いが常識となる可能性があります。このままでは日本の海外旅行を扱う業界は商習慣を180度変更するしか方法がありません。日本へのインバウンドツアーを扱う日本のホテル等も到着前の支払いが多く、それが当然のように動いています。グローバルスタンダードはもはや避けられない流れだと思います。一方、人手不足も深刻です。日本の社員、海外駐在員やローカル社員を含め、中小企業の人材確保は本当に厳しく、他業種との比較で、業界全体である程度の賃金アップを行わないと、我々の業界には優秀な人材確保ができなくなり、事業の存続すら危ぶまれる状況に追い込まれかねません。業界全体の利益率向上を目指し、それらを人材に投資するべき時期だと思います。世の中では「AI」が騒がれていますが、我々の業界こそサービス業の原点に戻り、「AI」と上手に付き合いつつ、今一度、人的サービスを前面に押し出すことが必要不可欠だと感じています。最後に、航空会社の冬ダイヤスケジュールの増便計画が目白押しという事です。多少はアウトバウンド用の席確保に良い影響を与える明るい兆しとして捉えたいと思います。

著者:大畑 貴彦(株式会社サイトラベルサービス)

掲載日:2023年10月04日