Voice 雑感、オータニさんから考える
 今年のWBCでの侍ジャパンの優勝は見事だった。ローンデポ・パークでアメリカを3対2で下した時は快哉を叫んだ。今回、7戦全勝でのいわば完全優勝とも言える結果の立役者は、日本球界を代表する名立たる選手達であることは勿論だが、米国MLBに所属する大谷、ダルビッシュ、吉田の3選手の貢献度は大きい。特に前者の2人は、その顕在する実力に加え米国での実戦力と世界から集まる選手たちを知る力が、侍ジャパンの力を増幅させた。

 一方、昨年の森保ジャパン率いるサッカー日本代表による2022FIFAワールドカップでのサムライブルーの快進撃にも酔いしれた。決勝トーナメント1回戦、PKで惜しくもクロアチア代表に敗れたが、今までの結果とは異なり今後ベスト8や4に勝ち上れる期待を残した。こちらも欧州リーグで活躍する選手たちが牽引したと言っても過言ではなく、1部リーグのスタメンで活躍する即戦力や、複数の国・チームを股にかける経験力が物を言った。

 海外に身を置き常に世界の選手たちと実戦を通じて切磋琢磨することが、彼らの能力(Capability)に、経験(Experience)や知る力(Knowing)が拍車をかけて、本来の力を増幅させているのだと思う。
 これは、ビジネスやアート、アカデミアなどの世界も同じことが言えるだろう。国境を越えて、グローバルにある同じ土俵にあがってこそ、世界に通用する力を得ることが出来るのだろう。海外で生活し、仕事をし、現地そして世界から集まっている人たちとコミュニケーションを取り、切磋琢磨していくプロセスが肝要だ。日本で培った能力に、海外での経験が更に力を与え磨きをかけてゆく。日本のローカル・ルールに守られ、日本の常識に拘っていては、ともすると「井の中の蛙」がそのまま「ゆでガエル」になってしまうと、私は思う。

著者:古澤 徹(シニア会員)

掲載日:2023年05月12日