将棋界では藤井聡太六冠(2023年4月10日現在)の活躍が大きな話題となって、子どもたちの間でも将棋の人気が高まっていると聞きます。一方、囲碁をたしなむ人口が日本では減少しつつあります。
海外に目を向けますと、囲碁を楽しむ人は近年非常に増え、国際大会も盛んになりその参加国も年々増えています。これは言葉の壁を乗り越えて、言葉がわからなくても対局が成立する国際的なゲームであるという、囲碁の特性が大きくものを言っているからだと思われます。
囲碁発祥の国である中国の囲碁が文化大革命で停滞していた昭和の時代、我が国は囲碁の最強国として世界に君臨していましたが、近年は中国に加え韓国も台頭し世界棋戦で我々日本のプロ棋士が優勝することは大変むずかしくなっています。両国では小さい子どものころから囲碁を学ぶことが、他の学習に勝るとも劣らない教育的効果の高い知的スポーツとして広く奨励されています(アジア競技大会の正式種目となったこともあります)。
2月まで日本経済新聞朝刊に連載されていた「ふりさけ見れば」に登場していた遣唐使、吉備真備(きびのまきび)が我が国に囲碁を伝えたとされています。「琴棋書画(きんきしょが。音楽、棋道(囲碁)、書道、絵画)」の1つとして文人の嗜みとされた時代を経て、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康といった戦国武将も愛し、江戸時代には「お城碁」で対局するプロも誕生。明治維新で活躍した大久保利通等が囲碁を打ちながら政策論争を戦わすシーンをNHK大河ドラマでご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
囲碁のルールは5つだけと極めてシンプル。しかしながら、良く言えば「奥が深い」、厳しい見方をすれば「なかなか対局ができるまでにはならない」のも事実です。私自身、50歳を過ぎてから病気がちになった父とのコミュニケーションの手段として囲碁を本格的に学びました。本に加えYoutubeなどでも学ぶことは出来ますが、何と言っても対局するのが上達への近道(ネットやアプリでも楽しめますが、私は相手の表情を見ることが出来るリアル派です)。地域コミュニティのイベント、囲碁サロン(碁会所)、囲碁教室などに通うのがお勧めです。私は中学から銀行までの先輩で、社会人を経てプロ棋士に転じた石倉昇九段の教室(現在は恵比寿駅ビル内の「よみうりカルチャーセンター」内)に3年通い、石倉先生から甘めの初段認定をいただきました。
海外に行ったときにも大いに役立つ、世界共通言語である囲碁。是非一度接してみてください。
(参考)囲碁のルール
1.碁盤の線の交差部分に黒と白が交互に打つ(マス目に打つのはオセロ)
2.地(自分が囲った領域)の多いほうが勝利
3.相手の石は上下左右の4点を囲うと取れる(辺は3点、隅は2点で取れる)
4.着手禁止点がある(打った瞬間に取られてしまう3.の地点)
5.コウ(同型反復の禁止。お互いが交互に相手の石を取り、無限に続きうる形。反復を避けるために相手が取った直後は他の場所に打たねばならない)
著者:岩田 健作(通商航空サービス株式会社)
掲載日:2023年04月14日