Voice 心を定めて
新型コロナウィルスの影響が大学の教育に最も影響を与えたのは、なによりも授業の形態です。アナログからデジタルの授業への移行にともない味わった数々の体験は困難の連続でしたが、新たな「大学らしい交流」を創出する機会でもありました。

帝京平成大学は首都圏4キャンパスに1万人の生徒を有する大学です。
当大学の“3つの強み”を紹介します。
1つ目は、「実学教育に力をいれている」こと。当大学には、観光の他に、薬学、看護、児童教育、スポーツなど特色ある学科があります。それぞれの分野でキャリアに直結する実践能力が身につけられます。就職率は良く、特に観光経営学科は100%です。
2つ目は、「先生と学生の距離が近い」こと。ホームルーム形式の授業を通して、社会に出て必要な学びや進路のアドバイスを行なっています。学生が研究室に来てすぐに相談できる環境も整っています。
3つ目は、「キャンパスの立地が良い」ことです。なかでも観光経営学科がある中野キャンパスは、中野駅から5分の四季の森公園を抜けた正面にそびえています。快適に安心して通学ができます。
大学教員は、様々なタスクを抱えながらスケジュールに管理される日々を送っていますが、若い人の未来を考えながら共に成長できる環境は、自らの心が満たされる素晴らしい空間でもあります。

さて、経営の神様と謳われた松下幸之助翁の力をお借りして話をいたします。
松下翁は経営者としては稀有といえるほど多くの著作を残し、そのひとつに『道をひらく』があります。
『道をひらく』は松下翁の体験と人生に対する深い洞察をもとに綴った短編随想集で、1968年の出版以来、530万部を超える驚異のロングセラーです。
どれほど多くの人が本書の一編一編に支えられ、人生の指針としてきたことでしょう。現在も色褪せることなく読み継がれているのは、時代を超越した“不変の真理”に触れているからだと言われています。
この『道をひらく』の中から、「心を定めて」の一篇を紹介します。

「嵐が吹いて川があふれて町が流れて、だからその町はもうダメかといえば、必ずしもそうではない。十年もたてば、流れもせず、傷つきもしなかった町よりも、かえってよけいにきれいに、よけいに繁栄していることがしばしばある。 
大きな犠牲で、たいへんな苦難ではあったけれど、その苦難に負けず、何とかせねばの思いにあふれて、みんなが人一倍の知恵をしぼり、人一倍の働きをつみ重ねた結果が、流れた町と流れなかった町とのひらきをつくりあげるのである。一方はただ凡々。他方は懸命な思いをかけている。そのひらきなのである。
災難や苦難は、ないに越したことはない。あわずにすめば、まことに結構。何にもなくて順調で、それで万事が好都合にゆけばよいのだが、そうばかりもゆかないのが、この世の中であり、人の歩みである。思わぬ時に思わぬ事が起こってくる。
だから、苦難がくればそれもよし、順調ならばさらによし、そんな思いで安易に流れず、凡に堕さず、いずれのときにも心を定め、思いにあふれて、人一倍の知恵をしぼり、人一倍の働きをつみ重ねてゆきたいものである。」
(出典:『道をひらく』130頁 1968年5月1日発行 著者 松下幸之助‎ 発行所 (株)PHP研究所)

まるで10年ごとにやってきた私たちの産業の憂いを暗示しているようかのようですが、復活に向かって前進している私たちにも当てはまる教訓だと思います。
私たち一人ひとりが危機感を忘れず、人一倍の知恵をしぼり、人一倍の働きをつみ重ねるということ、同じ社会に生きる者として、心と心を一つにし、ともに働く人たちの幸福をひとすじに探求することができないだろうか、ということでしょう。
ツーリズムを国の道をひらく立派な産業にしようという思いを持つお仲間とともに、なんとしてもこの苦境を乗り切れればと願っています。

著者:村山 真実(帝京平成大学)

掲載日:2022年09月27日