Voice コロナウィルス/パンデミックとオリンピック
2019年12月に中国の武漢で新型コロナ感染症の患者が確認されてから早2年余り、日本では第6波の真最中で、なかなか先行き収束の兆しが見えません。米国モデルナ社の最高医療責任者の言を借りれば、「オミクロン株は今夏には一旦収束を迎えるが、ウィルスは消えず、その後毎年秋にはワクチン接種を受け防御を高めながら共存しいていくことになる」とのこと、対症治療薬の開発とも相俟って風邪インフルエンザと同様の扱いになるのでしょうか?小職は職業人教育を専門とする学校法人に所属していますが、今回のパンデミック禍での学校運営には、一部授業をオンラインで実施、大人数での移動や集合のある研修旅行・行事の中止、業種・分野により卒業後の就職が厳しいなどの点で影響が出ています。学校関係で一番困窮しているのは、海外旅行の取扱いを主としている旅行会社と同様に外国人留学生のみを教育の対象としている日本語学校で、2020年4月以降日本入国を予定していた留学生約15万人が現在母国で待機している状況のなかで、既に身売りや廃校をした学校もあります。行政(や専門家)の皆さんには、より細かい具体的な感染防止対策指針の教示と外国人留学生入国規制の更なる緩和をお願いしたいと思います。
そんなコロナ禍、この半年で2回のオリンピックが東京と北京で開催されました。
基本的に無観客・バブル方式で開催された夏季・東京オリンピックでは、小職も競泳会場、選手村でほんの少し運営のお手伝いをしました。収支決算・正式総括は4月以降になるようですが、直前の開会式演出担当の解任や人材派遣業者の多額ピンハネ問題などがあり、経済効果も捕らぬ狸の皮算用に終わり、1964年の前回大会に比べいま一つ盛り上がりに欠け、パラリンピックの競技者から受けた感動のほか記憶にあまり残らない大会になりました。ウィグル人権問題でアメリカ・イギリスなどが外交ボイコットした冬季・北京オリンピックには小職も心情的ボイコット派でしたが、いざ競技が始まり日本選手が頑張っているのをTVで見ると思わず力が入り声を張り上げて応援していました。
平和の祭典オリンピックは元々各国の若者の交流と相互理解を趣旨としており、競争は飽くまで選手間のもの、国家間のものではなく、国威発揚を意図するものでもありませんが、オリンピックは正に究極のナショナリズムだなと感じました。国家の威信をかけての戦い、だからこそロシアの懲りないドーピングがあるんですね。
折しもロシアのウクライナ侵攻問題が渦中にありました。トランプ大統領が在任中標榜していたBuy Americanにしろ、米中の覇権争いほか、世界はナショナリズムへ向かっているようです。グローバリズムが完全に終焉することではなく、ナショナリズムをベースに政治体制や主義を同じくする国々が協力し合う新しい形のグローバリゼーションに形を変えるのではないでしょうか?小職は買い物をする時に必ず生産地(国)確認するようにしていますが、最近、安心或いは安全の日本製と言う表示をよく見かけます。食糧の自給率を高める、海外生産を国内生産に切り替える、石油に代わるエネルギーの研究開発、外国人への国土譲渡禁止は手を付けるべき喫緊の課題ではないでしょうか。旅行業界もINBOUNDに頼りすぎず、OUTBOUND/国内旅行を重視した方が良いですね。

著者:瀧潤一郎(学校法人中村学園/国際トラベル・ホテル・ブライダル専門学校)

掲載日:2022年02月24日