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例会抄録
2010年―夏期セミナー講演・抄録―
 
アンチエイジングのすすめ心の年齢・体の年齢
 
塩谷 信幸氏
北里大学名誉教授 アンチエイジングネットワーク理事長 AACクリニック銀座名誉院長
 
社会全体の高齢化が進むなかで、アンチエイジングへの関心が高まっている。しかし、そもそも年齢とは、加齢とは何なのか。アンチエイジングの専門家である塩谷信幸氏が、
老いるとはどのような現象であるかを医学的見地から解説。さらに若さを保つには、どのような方法があり、何を心がけるべきかを説いた。
 
人間の寿命について
15世紀の英国人トーマス・パーは150歳まで生きたと言われますが、公式記録の世界最長寿命はフランス人女性のカルマンさんで、122歳まで生きました。生物学的に、動物の最長寿命は大人になるまでの年月の6倍との説があり、それで計算すると人間はやはり120歳前後が限界かと考えられます。 日本では人口構造の高齢化が急速に進んでおり、第2次ベビーブーマーが高齢者となる2050年頃には、人口に占める高齢者の割合は一段と高くなります。こうした状況のもと、抗加齢医学の重要性も高まる傾向にあります。 年齢には生年月日を基準とする暦年齢もありますが、より重要なのは生物学的年齢です。この生物学的年齢を若く保ち、健康を維持し、少しだけ時計の針を戻す。これがアンチエイジングの考え方で、決して不老不死を目指すものではありません。またアンチエイジングとは老年期のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)を目指すものといえます。QOLには疾病予防、人と交わる社会生活、正常な体力と判断力の維持、この三位一体が必要です。 病気については、原因を遺伝のせいにする人もいますが、50歳以降の病気は遺伝よりも、それまでのライフスタイルの反映であることが多いのです。年をとってからでも遅くはない。いまからでも生活習慣を改めるべきです。たとえばタバコ。吸っているなら、いまからでも禁煙しましょう。
しおや・のぶゆき●1931年生まれ、55年東京大学医学部卒業後、米国オルバニー大学留学。64年に帰国後、東京大学、横浜市立大学などを経て73年から北里大学形成外科教授。定年退職後も国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として形成外科、美容外科の発展に尽力。
 
老いの原因とアンチエイジング
老いの原因には諸説あります。細胞時計説は、遺伝子プログラムにあらかじめ寿命が組み込まれているとの説です。DNA損傷説は、ストレスなどでDNAが傷つき老化現象が起きるというものです。ホルモン低下説は、1990年代から唱えられ始めたものですが、ホルモンが低下したから老化するのか、老化したからホルモンが低下するのか、因果関係がはっきりしない面があります。免疫機能低下説は、免疫機能を担うリンパ球などの働きが鈍り、それが老化の原因とする説です。活性酸素説は、酸素を体に取り込むことによって生じる活性酸素が、体を錆びつかせるというもので、老化の70%は活性酸素が関与しているとの説もあります。
 アンチエイジングには、全身の老化防止と皮膚の若返りがあります。全身の老化防止については、適度な運動とバランスの取れた食事、メンタル・アクティビティーが重要です。運動は、エアロビクスや筋肉トレーニングなど何でもいいのですが、意識的に取り組まなければ、なかなか実行できません。
 食事にも気をつけなければなりません。ネズミを使った実験では、食事を3割減らしたら寿命が3割伸びました。カロリーは少なめに1日約180キロカロリー以内。水分は多めに摂取する。老いると渇きを感じにくくなるので、食事に含まれる1L以外に1L摂取するよう心がけてください。脂肪も細胞膜の材料として重要なので、魚の脂肪を中心に、ある程度は摂るべきです。サプリメントの利用もお勧めします。抗酸化作用があるビタミンCやE、エストロゲンなどのホルモンを補うサプリメントがあります。
 デトックスもアンチエイジングに有効です。サプリメントが足し算の医療なら、デトックスは引き算の医療。有害物質を体から引き算していくわけです。日本人はマグロをよく食べます。食物連鎖の過程で蓄積された水銀をマグロと共に食べてしまうため、体内の水銀量が非常に多い。そこで水銀などの有害重金属や化学物質を、薬で取り除くキレーション治療も行われています。 
皮膚のアンチエイジングも重要です。皮膚は、外から見たり治療を施したりできる例外的な臓器です。また女性にとっては肌のアンチエイジングは重要です。肌の老化の8割は紫外線によるものです。紫外線に触れることの少ない尼僧と、農家の女性では、同年齢でも驚くほど肌の様子が異なります。
 
男性ホルモン低下の影響
年をとると男性ホルモンが減少します。女性は更年期に女性ホルモンが急速に減少するため更年期障害を引き起こしますが、男性はゆっくりであるため、更年期を意識することがあまりありません。更年期を過ぎると男性は男性ホルモンが少なくなりますが、女性は女性ホルモンが減っても男性ホルモンは減らないので、更年期以降は、女性のほうが総量が多くなります。その結果、冒険心や社会性、競争意識などを刺激する男性ホルモンが多い女性のほうが、男性より元気になるわけです。高齢者では男性ホルモンの高いほうが長生きするとの統計結果も出ています。男性ホルモンの減少は内臓脂肪の増加にもつながり、いわゆるメタボの原因にもなります。また男性ホルモンはストレスによって減少しますから、ストレスを取り除くことが大切です。 
最後に、アンチエイジングの5か条を申し上げましょう。「いくつになっても男と女」「肌の若返りは心の若返り」「バランスのよい食事と適度な運動」「よく笑い、よく話し、そしてよく噛む」「長生きこそ最大の誇り」解釈は個人によっていろいろかと思いますが、これら5つのことを念頭においていけば、さらに美しく楽しく生きることができるでしょう。