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例会抄録
5月特別例会
 
『夫婦それぞれ、ときどきふたり』 〜アクティブシニアのキーワード〜
 
芳原世幸氏
メディアファクトリー代表取締役社長
 
日本人の平均寿命が伸び、定年後の「第二の人生」の重みが増している。 余生というより、そこから始まるセカンドライフ。充実させるには「夫婦で一緒に」が理想的だ。逆に言えば「夫婦」を取り込むことで、セカンドライフに関連したシニアビジネスの可能性が今後大きく広がる。第二の人生を踏み出そうとしている、あるいはすでにセカンドライフを楽しみ始めた人々を読者とする雑誌『コレカラ』の編集長・芳原氏が、その実態を解説してくれた。
 
長期化する夫婦生活
夫婦が共に暮らす時間が長期化しています。05年の国勢調査によると、55歳女性の80%は配偶者がいますが65歳でも有配偶者率は70%に達しています。85年の調査では65歳女性の約半数はすでに夫を失っていましたが、これだけ男性の寿命が伸びてきています。80代になっても夫婦ともに健在という時代が、現実のものとなるでしょう。シニア世代は夫婦単位で捉える必要性が生じてきています。
シニア世代の夫婦を対象としたサービスや商品も開発されてきました。たとえば81年に発売されたJRの「フルムーン夫婦グリーンパス」。また04〜07年に実施された「映画館に行こう!夫婦50割引」キャンペーンは夫婦のどちらかが50歳以上なら、映画観賞券が夫婦で2000円という内容で大好評を博し、キャンペーン終了後も同種のサービスを継続している映画館は多いそうです。夫婦を巻き込むことで、ビジネスチャンスが広がると考えられるのではないでしょうか。
シニア世代は夫婦単位で捉えるのが重要ですが、実際には簡単にはいきません。第二の人生に対する考え方が夫と妻で異なっているからです。定年を迎えて「さあ、これからセカンドライフの始まりだ」と意気込む男性の発想に女性は反発するのです。なぜなら男性が定年を迎える前から、子育
よしはら・としゆき ●1957年生まれ。80年、リクルート入社。84年に車雑誌『カーセンサー』の創刊に携わる。その後、同誌や『エイビーロード』、結婚情報誌『ゼクシィ』、本の情報誌『ダ・ヴィンチ』、音楽情報誌『ザッピイ』などの編集長、発行人を歴任。01年、メディアファクトリー社長就任。現在、リクルート発行の『コレカラ』編集長を兼務。
てを終えた女性はセカンドライフをスタートさせており、自分のネットワークを持ち利害関係のない者同士のコミュニティーを築いています。いまさら「夫婦でセカンドライフを楽しもう」と言われても迷惑なだけというのが女性の本音です。
夫婦は相手にどのような感情を抱いているのでしょうか。08年我々の調査では、配偶者に「友情」を感じているのは男女ともに42%ですが、「恋愛」感情を感じているのは男性23%に対して女性は半分以下の11%。逆に「嫌悪」を感じたり、相手が「不愉快」と感じたりする割合は男性が4割以下なのに対して女性は5割近くに達しています。
国内宿泊情報誌『ゆこゆこ』の調査によれば、「誰と旅行に行きたいか」の質問に対する回答は、男性は約7割が「妻と行きたい」と答えたのに対し、「夫と行きたい」と答えた女性は男性の10分の1以下で、大半が「友人と行きたい」と回答。女性の中には、第二の人生を夫とどう暮らしていけばいいのか戸惑い、夫の定年後のギクシャクした生活を面倒だと感じる人が多いようです。
 
夫婦で読む雑誌『コレカラ』
シニア世代向けの雑誌作りを準備していたときに考えたのは、「夫婦で読める雑誌」。しかし出版業界や広告業界の意見は「そんな雑誌はあり得ない」「絶対に失敗する」でした。仲良く同じ雑誌を読むような夫婦が、そもそも存在しないというのです。しかし、必ずしもそうではないはずだと考えました。そこで、これから定年を迎えようとしている世代、あるいはすでに定年を迎えた世代として50〜65歳男女の結婚観を調査してみました。すると1940〜45年には恋愛結婚18%、見合い結婚70%だったのが、65年には恋愛と見合いが半々となり、2000年代に入ると90%以上が恋愛結婚に変化しています。現在の団塊世代の男女は70〜79年あたりに結婚しており、その時点では6〜7割が恋愛結婚しています。第二の人生を迎えて関係がギクシャクしているのは事実としても、一度は恋愛をして結婚までした男女です。今後の長い人生を考えれば、早く関係修復をして仲良く暮らしてもらうことが、我々のテーマであるとも思っています。
そう考えて創刊したのが『コレカラ』。充実したセカンドライフを送りたいと考えるシニア世代を対象とした「50代からの暮らし応援マガジン」として位置づけました。結果は、「夫婦で読む雑誌は失敗する」とした先輩諸氏の予言を覆すものでした。創刊号の読者アンケートでは、購読者の名義は男性55%、女性が45%で、「夫婦で読んだ」のは43.8%、「1人で読んだ」が51.2%でした。そして11号目の読者調査では「夫婦で読んだ」が69.7%に達し、「1人で読んだ」の30.9%を大きく上回ったのです。
記事で紹介した商品やサービスを購入したり参加申し込みしたりする比率は、夫婦で読んでいる読者の場合を100とすると、1人で読んでいる読者は60にとどまります。また旅行の記事で紹介した場所へ足を運んだ読者の比率は、夫婦で読んだ読者の場合を100とすると、1人で読んだ読者は40となっています。夫婦で読んでいる読者は、実際にアクションを起こす比率が高い傾向が見て取れます。
 
コレカラ世代の思考と行動
50〜65歳のコレカラ世代に関して、彼ら彼女らの思考と行動を、『コレカラ』読者と非読者で比較してみました。すると明らかな違いが浮き彫りになりました。宿泊を伴う国内旅行の実施は、コレカラ世代の平均が年間平均2.3泊なのに対して読者では3.1泊。宿泊費用は世代平均で1万6000円ほどですが、読者平均は2万3000円ほど。配偶者と一緒に旅行するのは読者の場合は男性で75.9%、女性でも63.8%となっています。海外旅行に関しては、読者は年平均0.8回で、費用も1回当たり30万円ほどかけています。『コレカラ』読者は夫婦で行動することが習慣化されつつあり、それによりアクション性向も消費性向も高いことが伺えます。
『コレカラ』の創刊準備から現在まで、自分も含めたコレカラ世代を見つめ続けてきてあらためて感じるのは、男性がいかに寂しい存在であるかということ。定年後に夢を抱き、念願のゴルフ三昧の生活が実現しても、毎日ゴルフに明け暮れて1カ月もすれば、それほど楽しいとは思わなくなります。
しかし、そこから本当に好きなものを見つけられれば、いきいきと元気なセカンドライフを送ることができます。つくづく思うのは、定年後も自分が本当に楽しめるものを、50代のうちにきちんと見つけておくこと。そして良好な夫婦関係を築くこと。価値観の異なる夫婦が、敵対的な関係になるか、うまい距離感を保って仲良く暮らせるかは非常に重要なポイントです。だからこそ『コレカラ』では、夫婦それぞれがそれぞれ自分の人生を楽しんでいて、プラスそのうえで、夫婦一緒に仲良く楽しめる50代からの暮らしを応援していきたいと思っています。